釣りビジョン

2012.2.15号

でいとう丸・神奈川県江ノ島港
相模湾・秋谷沖でマルイカに初挑戦!

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昨シーズン、竿頭でも“ツ抜け(10尾以上)”が続かず、ファンをやきもきさせた相模湾の冬期のマルイカ(ケンサキイカの幼体)。今シーズンは1月からトップで20~40尾とまとまった釣果が出始め、2月に入っても若干ムラはあるものの好調をキープ。釣れていない時は「ダメだね」と答えてしまう正直者の神奈川県・江ノ島港『でいとう丸』北村治之船長も「初めてなら今がいいよ」と太鼓判を押した。10日、江ノ島に渡った事すら無い私には初挑戦ずくめの取材へ出掛けた。

冬でも常夏のオーラを放つ江ノ島港

「今までウチへ来るのに迷った人は居ません。安心して来てくださいね(笑)」。前日に船長から電話で聞いた通り、ナビに電話番号を入力すると、一発で案内してくれた。東京に住んでいながら、江ノ島へ渡るのは人生初めて。夏は行きも帰りも渋滞しているイメージが強いため今までは避けて通っていたエリアである。江ノ島へ渡る一本道を通ると右手には美しく輝く富士山、そして左手には江ノ島港のマリーナ。冬なのに寒さを感じさせる部分が無い景色に気分が高揚した。午前6時半、受け付けにつくと、ロックンローラー・北村船長と愛猫の“はなまる宣伝部長”が出迎えてくれた。

日曜日はライブだぜ!北村治之船長
今回のターゲットマルイカ

目標は料理用の材料調達!!

マルイカ、ヤリイカ、ムギイカ・スルメイカ。ほぼ周年イカを狙う『でいとう丸』。それだけに船長のイカに対する拘りは料理にまで及ぶ。「マルイカはね、火を通した後の身の柔らかさも去る事ながら墨もまた美味いんですよ。他のイカと違ってマイルドでコクがあるんです」。今回は特別にマルイカの墨を使って誰にでも手早く簡単に作れる、“トマト煮イカ墨仕立て”の作り方を披露してくれると言う事、私もマルイカの材料調達員として頑張ろうと決めた。午前7時、この日は私を含めて7人が乗船。その中に紅一点、山下由香里さん。8日に来たばかりらしいのだが、アタリは頻繁にあったのに12尾しか釣れず悔しい思いをしたと左舷大ドモ(船尾)に陣取ってのリベンジ釣行とか。

マルイカのトマト煮イカ墨仕立て
マルイカの梅肉和え
マルイカのマヨネーズ炒め

釣り場は航程20分の秋谷沖

午前7時の定刻に河岸払い。釣り場は航程20分の秋谷沖と亀城根(かめぎね)である。「まずは昨日釣果が良かった秋谷沖へ向かってみます」(船長)。この海域は西風に弱いエリアだが、無風。朝の内は雲が出るが時間を追うごとに天候は良くなる予報。波があると釣りにくいマルイカ釣りとしては最高の条件が揃った。午前7時30分、釣り場到着後魚探反応を探していた船長が、バックギアへ入れた。「やってみて、水深80m」。『でいとう丸』とステッカーの貼られた投入器から5~8cmのスッテが勢いよく飛び出していった。しかし、着底後すぐに誰かが巻き上げればノっているのだが、誰も巻き上げない。気を取り直し、2流し目の合図。すると、左舷大ドモで「キャッ、やった!」と歓声。操舵室で魚探を見ていた私は慌てて振り返ると、山下さんが足元の桶にマルイカを入れた瞬間だった。「1尾目だったから掛かったかどうか半信半疑だったから静かに上げてきたらノっていました」。と早々のヒットに満面の笑み。

ベタナギの秋谷沖
70mラインに出たマルイカの魚探反応
1尾目ゲット

初めての人は“直ブラ”。基本は誘わない

冬のマルイカ釣りは水深が80~100mと深い。そのため、浅場ならライトタックルでもよいが、この時期はオマツリを避ける意味でもオモリは80号で統一されている。釣りをする前に船長に誘い方を聞くと、「初めての人は取り込みやすい枝スが1cmの直ブラがお勧めです。マルイカ釣りには、これって言う誘い方は無いんです。着底したら糸フケを取って待つ。それだけで当たる時も多々あります。上手な人を見ていると、細かい誘いをかけたりしていないのでよくわかると思いますよ」と意外な答えが返ってきた。マルイカ釣りと言うとイカ釣りの中でも非常に技術を必要とするテクニカルな釣りのイメージが強かったからだ。そこで左舷大ドモで2尾目、3尾目と快調に釣りあげていく山下さんの釣り方を見て勉強することに。

船で販売している直ブラ仕掛け&オモリ
山下さんのタックル一式
仕掛け図

合わせのタイミングが重要

「ノリが渋い時には、竿先に反応が出た頃にはイカは逃げる行動に移っている場合が多いんです。ツノにノってアタリが出たのなら、そのまま巻き上げればいいのですが、スッテを触っただけなら掛かりません。イカがツノにノるリズムを自分で作る。それが大事です」と船長。釣果を伸ばすコツは周りが釣れていない時、いかにその日のパターンを掴むか。自分でイカがノるタイミングを作る事が出来るか否かで釣果が大きく左右されるそうだ。釣れている山下さんのパターンを観察していると、着底後、泥地に刺さったオモリをズボッと抜いて糸フケを取る。そして、10~20秒アタリを待つ。そこでモヤッとした前アタリが手に伝わったら大きく上まで聞き合わせる。もし、アタリがない場合は大きく上下に2、3回竿を煽って誘いをかける。そして、再び竿を止めてアタリを待つ。そのパターンでポツリポツリと釣果を伸ばしていた。前アタリを感じ取り、合わせを入れる。それがマルイカ釣りの大事なポイントなのだ。

今度はダブル!順調に数を伸ばしていく
墨が付いたスッテはまめにブラッシング

午前9時過ぎ、時合到来!

午前9時までの2時間でトップは山下さんの7尾。決してノリが良いとは言えない状況だった。しかし、9時を回った時から船団が出来始めた。イカの群れが固まったらしい。船長のアナウンスも威勢が良くなる。「やってみて~。水深82m」。すると、山下さんが叫んだ。「なんか居る!竿にモアッと来た」。そして、次の瞬間大きくスイープに頭上まで合わせを入れた。すると、先調子の竿先がクン、クン、クン。「これは何尾かノっているかもしれない」と言いながら緊張した顔つきで慎重に巻き上げて来る。透明度の高い海面下に白いマルイカの影が見えて来た。1つ、2つ…「あれ?おかしいな。もっと居たと思ったんだけど…」。7本のスッテを確認すると、2本のツノのカンナに小型のマルイカのゲソがついていた。これを皮切りに船中全員にヒット。時合は10時過ぎまで続き、午前11時には3人が“ツ抜け”を達成した。

良型!
酒のつまみにいいねぇ♪
足一本!

1投目から“本命”がダブル!?

私も正午過ぎから釣り開始。左舷胴の間(中央)で1時間30分、真剣にマルイカ釣りにチャレンジした。午前10時の時合ほどのノリこそないものの流し替える度に誰かにアタリが出ていた。そして、緊張の第1投。直ブラ5本ヅノが着底、すぐに糸フケを取り5秒待った時、竿先がググン、グン。明らかにイカからのアタリだ。ゆっくりと竿を立てながら電動リールのレバーを倒し、巻き上げを開始。イカの足が切れないように一番スローで慎重に巻き上げた。しかし、残り30mを切ったところでブルブルブルブル…。サバかイワシが暴れまわっているような引きが竿先に伝わった。サバに振り回されてイカが落ちないように願ったが、2本のカンナに2尾の足がついていただけだった。

カンナ2本に残ったイカの足
待望の1尾目は足1本!
良型ヤリイカのダブル

マルイカを釣りたい人は今すぐ出掛けよう!

気を取り直して次の流し。その次の流しとコツを掴み1時間半で合計4尾を釣り上げ、何とか食材を確保した。そして、2回目の時合がきたのは納竿間際の14時前。山下さんは流し替えの1投目から4尾連続ヒットしたが、沖上がりの14時になり、後ろ髪を引かれる思いで釣り場を後にした。竿頭は山下さんで34尾。他の5人の平均も15尾前後と満足のいく釣果だった。相模湾のマルイカシーズンは3月頃まで続く。帰港後、船長に作ってもらった“沖漬け”と“トマト煮イカ墨仕立て”は絶品だった。是非お試しあれ!

沖上がりの直前に入れノリ
沖漬けにした残りでもこれだけの量

■釣り教室開催のお知らせ■

『でいとう丸』では、3月から毎月1、2回沖釣り初めての人を対象に釣り教室を開催する。期間は11月まで。釣り物はその時に釣れている物で行うため詳しくはHPをチェックしよう。
『釣り教室専用サイト』

(吉田 洋一郎)

今回利用した釣り船
神奈川県江ノ島港『でいとう丸』
〒251-0036 神奈川県藤沢市江ノ島1-3-12
TEL:0466-23-2008
詳細情報(釣りビジョン)
でいとう丸ホームページ
出船データ
マルイカ船:9,000円(氷付)
午前6時半までに集合、午前7時出船~14時帰港
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