魚はどこにもいたがそんなに大きくはない。でも掌では玄界灘の精力をいっぱいに充満させてピチピチ跳ねている。海に戻すのも勿体ない気がしていると、ふと南蛮漬けのことを思い出した。そうしてみるかと、握りこんで頭と尻尾が出るくらいの大きさならクーラーに放り込んでおくことにした。30gの餌(ジャリメ、北九州では小ケブ)がなくなるか、30匹釣るか、炎天下の浜で3時間はブン投げることにして、ジイちゃんトリプルスリーで頑張ることにした。潮がドンドン引いて干満半ばを過ぎると型も良くなってきた。ゴトンゴトンとオモリが砂紋を拾うオトが大きくなって、大物のいる海の底に岸辺が近づいたからなのだろうか、あるいは大きい群れが寄ってきたのだろうか。寄せる間、竿先をゴンゴン弾き続けてウホウホ楽しくさせられる。餌も尽きた、たくさん釣れた、海とはいえ砂漠の中に立っているジイちゃん、陽に炙られミイラにならぬうちに竿を外すことにした。帰って捌いて一連の手立てを加えて料理を拵える。できたぞ南蛮漬け、家内と2人で食ってみる、玄界灘の甘い潮に満たされたキスの味だった。