さて、午後である。タイ式スキッピングを自分のものにしつつある、この哀れな語り部。川は減水しつつあり、オーバーハング下の隙間が広がり、多少入れやすくなってきた。それでも奥へ直撃させるのではなく、チャチャチャチャチャ…と手前から奥まで優しい水音でスキッピングをさせねばならない。何度でもいうが、このスキッピング自体がチャドーへの誘いのアクションになっているからだ。チャン「トシさん、この木に10回投げてください」ガイドのチャンさんがそういうからにはかなり有望なスポットに違いない(大体、10回投げろと言われると20回投げさせられる)。スキッピングが奥まで綺麗に決まり、ジャバジャバと水面を引いてくると…横から黒い影が矢のように飛んできた。しかし、ワームが見えなくなったので反射的に合わせてしまい…すっぽ抜けてしまう。チャンさんがいうには何秒か待ってからアワセるくらいがいいらしい。結局、このスポットで3発バイトがあったが、一度もロッドに重さが乗ることはなかった…。夕方に近づくにつれ、川はどんどん減水していく。軽く1m以上水が減り、朝には問題なく行けた上流部へはボートを降りて引っ張って行かなければならない状態だ。ここらはオーバーハングなどのカバーは減り、ボトムの石が露わになっている。チャン「トシさん、ここはバズベイトです。出ればデカいよ!」そう言われた気がする。石が露出したバンクへとヒュージバズベイト(デプス)をキャストし、バス釣りのときよりも速いスピードで、カタカタジョバジョバと水面を荒らしまくる。すると…ドボーン!という待望のバイト。しかし、びっくりアワセをしてしまい、またも乗せることができず…。夕日に背中を押されながら、諦めずに投げ続けていると…再び水面が大爆発!ヒットしたチャドーはこちらに一気に走ってきた。あまりに速いためテンションが抜け…バラしたかと思ったが…バレてない! ラインが横に走っている。さらにボートの真下へと突っ込もうとするチャドー。ロッドが折れそうなくらいボートに沿って曲げられている。耐えるしかない。望月「チャンさん、デカいよ! ネットを…」最後は強引にチャンさんの構えるネットへと魔物を封じるかのように叩き込んだ。望月「やった! やったよ、チャンさん!」チャン「やっと釣ったな! ビッグサイズだ!」おそらくだが、この日は語り部の長い釣り人生で、最も多くキャストした日だと思う。3000投以上したのではないだろうか? スキッピングで入れたら、すぐに回収、その繰り返し。暑くて体への負担も大きい。かつてないくらいハードでアスレチックな釣りだった。肩も背中もバキバキになってしまった。40代のおじさんが高校の部活の合宿のようにフルスイングで釣りをしまくった3日間。実をいうと、翌日もまた未知のダムを開拓することになるのだが…それはまたの機会に語りたいと思う。