釣りビジョン

2010.5.15号

黒川本家・神奈川県新山下
東京湾の超高級魚、マゴチが釣りたい!

02_main.jpg
活き餌を使った伝統釣法のひとつ「東京湾のマゴチ釣り」。熱心なファンの多い釣りでもある。横浜・新山下の『黒川本家』では、毎年、専門の乗合船を出しており、シーズン中、足しげく通うファンも少なくない。私も1度はやってみたいと思っていた釣りである。5月1日、いつも以上に張り切って出掛けた。

昭和の雰囲気漂う船宿『黒川本家』

古き良き時代、昭和の雰囲気が漂う船宿『黒川本家』の自宅兼待合所は昭和建築のホッとする店構え。加えて女将さんの温かい人柄も相まってとてもアットホームな船宿である。“マゴチ船”は、朝7時出船なので6時には到着し、受け付け準備諸々を整えたい。待合所の真裏が乗船場所、荷物の積み込み等楽なのも嬉しい。

横浜新山下:黒川本家
船宿受付場所
縁側を抜けると乗船場

マゴチの旬は?

“照りゴチ”という言葉がある通り、太陽がジリジリと照りつける真夏が旬とされるマゴチだが、実は1年中美味しい魚であると言う。ほぼ一年中、マゴチを食べている『黒川本家』の女将さんが言うのだから間違いないはず。特に“活マゴチ”は、市場価値が非常に高く(浜値で1kg5000円を超えることもある)、割烹料理店や高級料亭に直行する魚でもある。そんな超高級魚が食べられるのも釣り人の特権だ。もちろん、釣れたら!の話ではあるが。

使用する活き餌とは!?

本物の車海老です!
さて注目の活き餌だが、現在は“サイマキ(鞘巻)”というエビを使う。「はて?サイマキ!?」。その正体は高級エビとして知られる“車海老”である。一般的に10㎝以下を“サイマキ”と呼ぶ。この釣りでは、その高級エビを惜し気もなく使う。また、シーズン後半頃には活きたハゼを使うこともある。

餌付けが一番大事!

マゴチ釣りで一番大事なのは餌付け-と言っても過言ではない。エビを正しくハリに付けられないと満足な釣果は期待できない。もちろん、私のような初心者は遠慮なく船長に聞けば良い。また、自信がない人は、操舵室に行けば船長が付けてくれるので恥ずかしがらずにお願いしよう。
また、仕掛けについては、仕掛け図を。15号の鋳込みテンビンを使った実にシンプルな仕掛けである。

仕掛け図
これがマゴチバリ(ヒューズが巻いてある)
これが正しいハリ位置

オモリを底から1m切ってアタリを待つ

ベイブリッジをくぐるなんて普段はないでしょ?
定刻通り7時に出船。ベイブリッジを潜り抜け東京湾を横断、一路千葉県側へ。航程40分程で最初の釣り場・富津沖に到着。ここは “行きがけの駄賃”ともいうべきワンスポットとか。“モーニングバイト”を期待したが、この日は不発。その後、現在のメインの釣り場である大貫沖へ移動した。
釣り場の水深は浅い。大貫沖でも大体20m以下である。タナはオモリが底から常に1m切った状態をキープする。餌の付け方をクリアしたなら、次はこのタナ取りが重要である。マメにタナ取りをすることがそのまま誘いにもなるので、とにかくタナ取りはマメに行いたい。この釣り最大のキーワードである。

ナイスサイズ!
いやいやスゴイ!!
立派なマゴチです!

「ファースト・マゴチ」を釣った人にサイマキをプレゼント!

マゴチにズタズタにされたマイサキ
大貫沖で釣り始めると、すぐにマゴチのヒットが連発した。あちらこちらで魚がタモに収まった。「読み通り!大成功!」と、してやったりの船長。『黒川本家』のマゴチ船では、「ファースト・マゴチ」を釣った人にサイマキ1尾をプレゼント(実施条件は、5人以上乗船時=ライフジャケット着用者に限る)してくれる。

マゴチ7秒!?

取材活動もひと段落、いよいよ私も竿を出した。とにかく、このつりに関する限りは、ド素人の当方、まずは船長に、活きたイワシを泳がせて釣るヒラメ釣りのように「ヒラメ40」のようなアワセのタイミングがあるのか?と聞いてみた。「それならマゴチ7秒!…強いて言えばね」と船長。
昨年、『黒川本家』の待合所にある大型水槽で撮影したマゴチの捕食シーン動画をご覧頂きたい。マゴチが恐るべきスピードでサイマキをひと飲みにするシーンに相当驚かれるだろう。またこの動画の中でも船長が繰り返しタナ取りの重要性を話しているのでそこにも注目だ。

出たぁー!60UP!!

ポイントの小移動を繰り返し、途中パラシュートアンカーを使ったりしてよりナチュラルに船を流して行く。船長は、難しい潮加減に色々と対応してくれているようだ。移動の度に誰かしらにキチンと釣れてくるのがその証拠だ。しかし、こちらにはマゴチのアタリすらない。たまにククッと反応があるのはアオリイカが、エビを引っ張っているアタリだ。ハリ掛かりはしないが、何度も船べりまで上がって来たのを目撃したので間違いない。「今度は絶対ヤエンを持ってこよう…いっそイカ釣りにするか」という思いが頭を過った。しかし、ここで左舷ミヨシ(船首)の釣り人にこの日最大62㎝のマゴチが釣り上げられた。「マゴチは確かにここに居る」。一気にモチベーションを上げ、仕掛けを沈め続けた。
「タナ取り…タナ取り…」。何度も糸を出したり入れたり竿を上げ下げして船長の言う通りにタナ取り動作を繰り返した。「次こそは、マゴチのアタリがあるに違いない!」と信じて。気づけば集中力はず~っとMAXだ。アタリをとって竿で合わせてハリに掛ける釣りというのは、最もシンプルで面白い釣りである。

あと1cm足りず…でも立派59㎝!
これが本日最大62㎝!!

残念無念…

「それじゃーね、このひと流しで終了となります」と言う船長のアナウンスに逆にアドレナリンがドッと出た。当方、ここまでノーフィッシュ。しかし、『釣りビジョン』の番組には、よく“最後のドラマ”で劇的なエンディングフィッシュを釣ることが少なくない。もちろん、自分もそこに賭けたのだ! しか~し…「ハイでは終わりましょう~お疲れ様でした」。定刻通り午後3時の終了時間となってしまった。「くぅー 残念無念…」。しかし、本当に面白かった。負け惜しみではない。魚を釣っていないのにこんなにドキドキした期待感がある釣りはそうはない。必ずリベンジに行こうと心に誓ったのは言うまでもない。
この日は船中でマゴチ21本。先にも書いた通り最大62㎝を筆頭に59㎝と全てがナイスサイズという快心の内容だった。『黒川本家』のマゴチ釣りは9月末まで出船予定なので是非チャレンジして欲しい。

60UPは、魚拓のサービス

『黒川本家』では60㎝以上のマゴチを釣った記念に魚拓を取ってくれるサービスがある。1枚は釣り人に進呈され、もう1枚は船宿の壁に貼り出されるのだ。「どうだい!この魚は!!」と、今も昔も釣り人の自慢の種といったら魚拓が王道だ。写真では伝わらない1分の1スケールの迫力だ。それを女将さんが手早くその場で作ってくれるのは嬉しい限り。60㎝以上のマゴチを釣って『黒川本家』の歴史に名を刻もうではないか。

(鈴木 恭介)

今回利用した釣り船
横浜新山下:黒川本家
〒231-0801 神奈川県横浜市中区新山下1-3-8
TEL:045-622-9772 (定休日:毎週木曜日)
詳細情報(釣りビジョン)
黒川本家ホームページ
出船データ
マゴチ船料金:9000円(サイマキ5尾付き ※追加1尾100円)
出船時間7時/沖上がり時間15時
※記事の掲載内容は公開日時点のものになります。時間経過に伴い、変更が生じる可能性があることをご了承ください。
プレミアムメンバー