釣りビジョン

2012.1.15号

信照丸・千葉県勝浦松部港
千葉県・外房、勝浦で“湾フグ”スタイルに挑戦!

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東京湾でのショウサイフグ釣りは“湾フグ”と呼ばれ、すっかり定着した感があるが、その歴史は意外に浅く、これ程多くの船が狙うようになったのは、高々ここ10年程の話である。同じフグ釣りでもオモリ25号が基準になる外房のスタイルとは異なり、東京湾では重くても10号、軽い時は4号程度と非常にライト感覚で楽しむ。アタリを出して掛ける、あるいは竿先に出る微細な違和感を感じ取って掛けて行く世界観はバスマンや多くのルアーマンを魅了して止まない。その“湾フグ”スタイルを千葉県・外房で味わえると聞き、勝浦松部港『信照丸』の乗合船に乗った。

無風快晴、満天の星空に大満足!

1月5日午前5時前、未明の松部港に到着すると満天の星空が出迎えてくれた。しばし寒さを忘れ、夜空を見上げていると『信照丸』に明かりが灯った。「今日はいいナギになりましたね」と穏やかな笑顔を見せたのは吉野勉船長。前日は南西の強風でポイントが限られてしまったが25cm級の良型中心に11~19尾だったと言う話に期待が膨らむ。

勝浦の夜明け
左が上乗り役の達哉さん、右が吉野勉船長

外房の“タイム釣り”と“湾フグ”の違い

数秒に1度の間隔で竿をシャクリ、フグを掛けて行く釣り方を“タイム釣り”と呼び、外房エリアでは良く目にする釣り方である。フグの群れが濃く高活性時には有効で、特に初心者や慣れていない人に釣らせるには、この方法が一番!と薦める船長も少なくない。反対にフグの群れが固まり切らず活性の低い場合には無駄にシャクリ続け、せっかく餌に寄ってきたフグを散らせてしまう事もある。そんな時に威力を発揮するのが“湾フグ”スタイルである。“引っ掛け釣り”を連想してしまう“タイム釣り”に対し、繊細なタックルでアタリを出して掛けて行くそれは低活性時の対策としても非常に面白いアプローチだろう。そして今回は“湾フグ”のスペシャリストでバスプロ・宮本英彦さんと橋本悟さんに初心者である私の指南役をお願いして5時30分の出船時刻を迎えた。

カットウバリにはアオヤギ餌
喰わせバリ用のアマエビが付いてくる
仕掛け図

鴨川沖、水深15mでスタート

この日の乗船者は、私を含め7人。世間では仕事初めというタイミングだったが“初釣り”を優先させた愛すべき“同志”を乗せた『信照丸』は、およそ1時間で鴨川沖に到着した。「どうぞ、15mです」。東の水平線がオレンジ色に染まる頃、投入合図が出た。海上はほぼ無風だったが沖からのウネリが少々気になる。その1流し目、宮本さんの竿先に小刻みなアタリ。「フグじゃないみたいだね」。2流し目もアタリは遠く、船長は小湊沖に船を走らせた。水深は25m前後。砂地のボトムで誘っていた宮本さんがすぐに掛けた。上がって来たのは25cm級の良型ショウサイフグ。そして次の投入でも連続ヒット。明確なアタリでフッキングが決まり、同じサイズをキャッチ。「このサイズで揃うといいね」。宮本さんの頬が緩む。船内でもいいペースでフグが上がっている。「橋本さんが大きなカワハギを釣りましたよ」と、教えてくれたのは船長の息子で上乗り役の達哉さん。見に行くと27、28cmはありそうな大型カワハギ。さらに同サイズのフグが5尾。さすが元WBSのバスプロ、仕事が早い。さらに右舷大ドモ(最後尾)では大型のホウボウも上がり、船上は一気に活気付いて来た。この勢いに乗ろうと私も船宿オリジナル仕掛けで参戦した。

フグ、フグ、フグ

予想外の西風に大苦戦!

小湊沖に来て宮本さんが5尾、橋本さんが6尾を数えた所で3流し目に入った。“湾フグ”スタイル初挑戦の私も宮本さんの釣り方を手本にロッドを握った。しかし、この頃から西寄りの風が吹き始めて来た。その風に船を立てると沖からのウネリを横から受けてしまい仕掛けをボトムにステイさせる動作が難しい。次第にアタリは遠のき船長も浅い方、深い方と探って行くのだがウネリは更に高さを増して行く。そんな中、私に何かが来た。かなり重さがあり、ポンピングを交えゆっくりと巻き上げると大きな木の枝ほどのカジメ(海草の一種)だった。期待を裏切られがっかりしていると「ナグロ(ウネリ)が酷いね。港の前まで戻ります」と船長。風とウネリで底荒れ状態となり、カジメが海底付近を漂っているとの事。フグ釣りには最悪の状況である。

“湾フグ”スタイルの見せ所!

松部港沖に戻った『信照丸』は、魚探反応を探しながらの拾い釣りという展開になった。いよいよ“湾フグ”スタイルの見せ所である。ここで効率よく数を伸ばして行ったのが橋本さん。WBSのトーナメントを舞台に戦った宮本さんと数で勝負。もはやトーナメントモードである。バスでは中々勝てなかったと言う橋本さんだったが、アタリの出し方が一番嵌っていたのか、いいサイズを連発、宮本さんとの差を開いて行く。「気分がいいねえ」。鋭くフッキングを決めながら橋本さんが笑う。そして私にもようやく25cm級のフグが掛かり辛うじてオデコ(0尾)を脱出。しばらく時間を空けて同サイズをキャッチした所で沖上がりの時間を迎えた。

良型カワハギ
良型ホウボウ

竿頭は17尾

この日のトップは17尾を釣り上げた橋本さん、宮本さんは11尾に終わり、元トーナメンター対決は橋本さんに軍配があがった。私はキープサイズ2尾でスソ(最低)になってしまったが、船中の平均は10尾前後で良型中心だった事を考えると十分お土産になった。
女将さんにお奨めの食べ方を聞いた所「醤油ダレに漬け込んでから唐揚げにすると美味しいよ」との事。釣っても食べても楽しめるのがショウサイフグの最大の魅力だ。また吉野船長の話では、「本命ポイントで最後まで出来ればトップで30尾は釣れただろう」という手応えもあったので、底荒れが収まれば間違いなく有望だ。
※実際に9日の釣果は32尾と好釣果だった。『信照丸』では周年フグ乗合船を出しているので、いつでも外房の“湾フグ”スタイルが楽しめる。希望でイサキやヤリイカ、午後にはティップランエギングにも出船する。

(津端 雄大)

今回利用した釣り船
千葉県勝浦松部港『信照丸』
〒299-5241 千葉県勝浦市松部1647-1
TEL:0470-73-3483 (定休日:第一・三土曜日)
詳細情報(釣りビジョン)
信照丸ホームページ
出船データ
食わせ用エビ餌、氷付き1万円
(午前5時30分出船、午後12時沖上がり)
アオヤギ餌1パック500円、貸道具1000円
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