釣りビジョン

2013.4.15号

まごうの丸・神奈川県茅ヶ崎港
神奈川県・相模湾のシロギス、条件良ければ“束釣り”も!

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三寒四温を絵に描いたような陽気が続いており、海がシケる事も多い。そんな中、神奈川県・相模湾のシロギスが好調になって来たと聞き、関東地方が暴風雨に見舞われた翌日、少々不安を抱えて神奈川県・茅ケ崎の『まごうの丸』に出掛けた。

餌代別なのが“茅ヶ崎スタイル”

4月も半ば、大分夜明けも早くなって来た。家を出ようとした5時前には空は白みかけていた。自宅がある横須賀を出て国道16号線から逗葉新道を経由、逗子、鎌倉、江の島と海岸に沿って茅ケ崎港へ。江の島前から国道134号線で茅ケ崎西浜駐車場入口前の信号を過ぎ、次の信号を左折、砂の小道を下った右手が『まごうの丸』だ。
周辺に数軒の船宿が軒を連ねている。車を止めて店先に行くと、店先に魚種別に魚名の書いた木札がある。その木札の前にクーラーボックスを置いて船座を取るのだが、シロギスの木札前には、既に荷物が数個置いてあった。三橋勇樹店主が指示してくれた駐車場にはざっと80台の車が並んでいた。車を降りると、眼前に朝日に輝く白い富士山。店先に並べた荷物は100mほど先の船着き場まで、トラックで運んでくれる。船代には氷が含まれているが、餌は別なのが“茅ヶ崎スタイル”。餌のジャリメを1パック買って船着き場へ。先客は6人、右舷で4人の釣り人が準備をしていた。左舷にはミヨシ(船首)とトモ(船尾)にクーラーボックスが置いてある。それではと空いていた左舷胴中に荷物を置いた。

富士山がバッチリ
店主の三橋勇樹

若干、喰い渋りの中、スタート!

この日の操船はシロギスの釣り場を熟知している古山拓也船長。7時少し前に出船。夏には海水浴客で賑わう湘南の海は、前日の荒天が嘘のように透き通るようなエメラルドグリーンに輝いていた。遠方の山とマッチして美しい海だが、釣りには向いていないと思われる色に不安が走る。船は真沖に進み、10分足らずで釣り場へ到着。「やって下さい、水深は23m」と言う古山船長のアナウンスで一斉に仕掛けが海中へ。潮が流れていないのかスパンカーが張らない。この日は全員が2本竿で1本は置き竿。そんな中、右舷トモから2番目の媚山史郎さんの1本は活き餌での大物狙い。道糸5号でごつい竿にヒラメの仕掛け。メインの1本は餌となるシロギスを狙う。右舷ミヨシは町田市から来た言う井上良久さん。聞けば井上さん、東京湾のシロギス釣りのベテラン。道具立てを聞くと、道糸は0.6号、片テンビンにオモリ15号、ハリスは0.8号で長さは60cmと短く、ハリは競技用の7号の2本バリとの事。餌のジャリメの頭部を切って3cm程の長さで丁寧に餌付けしている。釣り方を見ていると少し投げて、仕掛けが海底に馴染む頃、竿を軽く煽るようにシャクる。間髪いれず竿先にクンクンとアタリ。すかさずリーリングしたが途中でバレてしまった。喰いが浅いのかハリ掛かりはよくない。左舷ミヨシのEさんはムーチングタイプの2本竿。ハリスは1.5mと長仕掛け。餌も1匹付けに近い大振りを付けて、前方7、8mに投げては手前に引いて来ている。トモでは地元茅ケ崎の小沢賢三さんが、2m位の竿2本。ハリスは1mで2本バリ仕掛け、1本は置き竿にして後ろに向けて投げてから船尾に立て掛けていた。左舷ミヨシのEさんの竿に強いアタリ。ムーチングタイプの竿が胴から半絃を描き、グイグイと引き込まれている。「シロギスにしては強い引きだなあ」と見ていると、姿を現したのは赤い体に胸ビレがブルーに輝いた30cm弱のホウボウ、嬉しい“ゲスト”だ。

私、釣られちゃった
ホウボウ写しても顔を写さないで
仕掛図

喰いが浅く苦戦

井上さんのバケツを覗くと、中には既に数尾のシロギスが泳いでいた。左舷トモの小沢さんの竿先が、ピクンピクンとシグナルを送っている。「何回も当たっていたが、やっとハリ掛かりしたよ」と言いながらリーリング。エメラルドグリーンの海面を分けて上がって来たのは20cm程のシロギス。井上さんがチョイ投げして手前に引いて来るとクンクンとアタリ。即合わせしているが途中でバレることも多い。潮の加減か底荒れの加減かハリ掛かりが悪い。それでも大小交じりでポツリポツリと釣っている。他の方は「アタリがないよ、たまにアタリがあってもハリ掛かりしないね」とボヤく。古山船長は船中を見回しながら「潮はそこそこ行ってるんだけど、喰いが浅いね」と当惑気味。ここで私も竿を出した。太目のジャリメを選び、頭部を5㎜程切ってから3cm程刺し、ハリ先から1cm程垂らす。オモリが海底スレスレになるようして竿掛けにセット。再びカメラを持って一廻りしてくると竿先がクンクンやっている。慎重にリーリング、中型のパールホワイトのシロギスが掌の中で元気に暴れた。

餌はこう付けるんだ
パールホワイトの女王
こいつデカいだろう

底荒れで、魚が散ってしまったのか!?

久しぶりに来たよ
船長から竿上げの合図があり、少し灘(岸)寄りに移動。今度は水深16mだ。右舷2番目の石黒 等さんは誘いも掛けず、仕掛けはほとんど船下に。右隣の媚山さんは「釣れない、釣れない」と言っていたが、ついに中型の“本命”をゲットするや、早速、ヒラメの仕掛けにシロギスをセットしていた。船長は「日並が良いと良型のヒラメやマゴチが喰ってきますよ」と言う。「アユが解禁になるまではキス釣りだよ」と言っていたトモの羽田富夫さんも「本当に喰いが浅いね、バレてばかりだよ」とボヤキが出た。両ミヨシだけがポツリポツリと釣っていたが、9時を回った頃、パタリとアタリが止まった。船長が「少し流れていた潮も止まってしまったね」とお手上げ状態。たまに来る小気味よいアタリは5、6cmのヒイラギ。やはり昨日までの暴風雨で底荒れ気味なのだろう。船長は、少しでも潮の効く場所をと、平塚寄りの相模川河口沖に移動。ここは水深は11m程と浅い。「例年ならこの辺で喰うんだけどねぇ、今年は潮が遅れているよ」と船長。この場所も間を置いてヒイラギ交じりでポツリポツリと釣れるだけ。

功を奏した、風に流しての拾い釣り!

太陽が真上になった正午、船長は、南風が吹き出したのを機に船を茅ケ崎沖に移動させた。潮が動かないのでスパンカーを張り、風に乗せて流し釣りを始めた。船は南風に押されてトモ流し状態になる。同時にポツリポツリとアタリが出始めた。左舷トモの小沢さんが良型の一荷(2尾)にニッコリ。船長がカメラを持ってきて船宿HPに載せる映像を写した。その後、私の竿にもアタリ。引き込みが強い。心をときめかせてリーリング、海面に白い魚体が姿を見せた。20cmオーバーのシロギス、それも一荷釣りに頬が緩む。船長が跳んできて写真に収めてくれた。井上さんは、2本の竿を巧みに操り、手返し良く誘いを掛けてはシロギスをゲットして行く。尾数を聞くと51尾との事。左舷トモの小沢さんの竿が大きく弧を描いた。「重い、何だろう」と言いながら慎重にリーリング。しかし、少し巻き上げたところでポンと竿先が跳ね上がった。良型のシロギスが食い千切られてボロボロになっていた。ヒラメかマゴチか?右舷に行くと、媚山さんの活き餌釣りの竿がクンクンやってる。「来てますよー」と声を掛けると「おー」と竿を持ち引き込みを待つ。グーグーと硬めの竿先が引き込まれるのを見て「もういいかなぁ」と呟きながら大きく竿を立てた。グイグイ引き込まれる竿先に皆の視線が集まる。「エイか、サメか」と船長が冷やかす。上がって来たのは1kgオーバー確実のヒラメ。船長の差し出すタモに無事に納まると「オーオー」と皆の声。1.5kgはありそうだ。狙い通りに媚山さんニンマリ。

喰い渋りでもトップは88尾!

その後、中だるみのあった井上さんが再び順調に釣り始めた。仕掛けが短かったので継ぎ足したとの事。相変わらず少し投げては誘うように竿を煽り静かに待つとシロギスのシグナル。「15cm級かなぁ」とか「ちょっと型が良いよ20cm級だよ」と言いながら順調に数を伸ばしていった。「1束(100尾)釣って下さいよ」と言ったら「喰わない時間が多かったからこの状態では難しいな」と笑った。しかし、最終的には大小交じりで88尾をゲット。2番手が25尾なのだからその腕の凄さが分かる。
この日は、ほとんど潮が流れず、喰いこみが極端に悪かった。そんな状況下でも1束近い釣果が上がった。船長も「潮が遅れているけど、これからはどんどん浅場に上って来て餌を追います。大小交じりが魚影の濃さを物語っています」と太鼓判。今後が大いに楽しみだ。

やったぜ良型の一荷
こちらも良型の一荷
狙い通りの大物だよ

(釣りビジョンAPC・倉形 金幸)

今回利用した釣り船
神奈川県茅ケ崎港『まごうの丸』
〒253-0061
神奈川県茅ケ崎市南湖6-4-16(定休日:第1、第3火曜日)
TEL:0467-86-5938
詳細情報(釣りビジョン)
まごうの丸ホームページ
出船データ
シロギス乗り合い6,000円(氷付・餌別)、餌ジャリメ1パック500円
出船6時50分・沖上がり2時
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