今シーズンの模様を山田真一船長に尋ねると、イカの型は例年並みとのこと。シャクリ方はその日その日のパターンはあるものの、海底付近をじっくりゆっくり優しく誘う釣りが中心となるようだ。また、イカが中型・小型の頃には細い棒状のツノに、良型になると平べったい魚型のツノに反応が良い傾向がある“気がする”そうなのでご参考まで。年始には“パラソル級”と呼ばれる胴長50cm超えにまで成長する石花海のヤリイカ。この記事が掲載される年明けには、豊穣の海で繰り広げられる巨大ヤリイカの饗宴が真っ盛りのことだろう。ヤリイカ釣りをゆっくり満喫できる船宿『ふじ丸』で特筆すべきは、その快適さだ。港から遠く離れた石花海までの航行は、往路は自動車の運転の疲れを、復路は釣りの疲れを癒やすのにちょうど良い。シャクリや仕掛けの捌きに体力と神経を使うイカ釣りでは、この休息時間が非常に重要で、「ふじ丸」の清潔で心地よいキャビンは、身体を伸ばしてゆっくり休むことができる。他にも仕掛けに片手を使いながら何かをすることの多いイカ釣りで、オケにジャストサイズのザルが用意されていたり、風の中でもツノが捌きやすいよう、船縁にピッタリの大きさにカットされたツノ掛けマットが貸し出されていたりと、快適さへの心配りがありがたい。乗下船時や船上で事ある毎に「ゆっくりでいいよ」と言う船長の声掛けに救われる場面も多く、常連さんや乗り合わせた釣り師の方々も、オマツリで声を荒げたり、仕掛けの回収を急かしたりする「イカ船にありがちな険悪ムード」は微塵もない。「イカ釣りが苦手」と言う人が苦手としているのは、実はあの雰囲気なのではないかと気付かされる一日だった。「次は温泉宿も一緒に予約しようかな」と感じる、『ふじ丸』はそんな船宿だ。