2025年10月09日公開

風立ちぬ神無月。朝夕は涼しさを感じる一方で、日中はまだ夏日が顔をのぞかせる。海の中では季節の移ろいが静かに始まり、今季も浅場でカワハギが好調との報せが届いた。久里浜駅のほど近く、カワハギの老舗『山下丸』を訪ねた。
アクセス抜群の老舗船宿
創業70年。全国に先駆けてカワハギ専門乗合を始めた『山下丸』の船着場は、久比里・夫婦橋の袂にある。
車なら横浜横須賀道路・佐原ICから約10分。ナビに「横須賀市久比里2-6-10」と入力すれば迷わない。電車派にも嬉しい立地で、JR横須賀線・京急「久里浜駅」から徒歩6分。道中にはコンビニもあり、週末の駐車場混雑を考えると電車釣行もお勧めだ。
到着後は船縁に竿を挿して釣座を確保し、乗船カードを記入、受付で乗船料を支払い、氷券とエサのアサリを受け取る。仕掛けは船でも購入可能だが、フグによる消耗が激しいため予備を多めに準備しておきたい。
昔ながらのアサリ殻むきの音をBGMに荷物を積み込み、エサの下ごしらえを終えたら出船準備完了。この日は平日ながら予約多数につき、2隻出しのゆったり釣座で出船。「第三十一 山下丸」は定刻前に河岸払いとなった。
スタートからアタリ活発!
桟橋を離れ、穏やかな海を走ること約30分。到着したのは竹岡沖、水深10mの浅場。開始からわずか2分、最初に竿を曲げたのは左舷胴の間の津牧さん。竿先を小気味よく叩くファイトで手のひらサイズのカワハギを抜き上げた。その直後、左舷トモにはワンサイズ上が、右舷ミヨシにはワッペンサイズと次々に本命が取り込まれ、この海域の魚影の濃さを印象づけた。
やがてフグの猛攻が始まり、仕掛けを止めるとすぐにハリを奪われる難局も。それでも根を見極め、細かなアタリを逃さず拾った釣り人から魚桶が満たされていった。
船長に訊くカワハギ釣りのコツ
「第三十一山下丸」の山下克範船長に、今シーズンのカワハギについて訊いた。
──今季のカワハギ、例年に比べていかがですか?
船長「カワハギはここら辺に着いてるから数は良いんだけど、フグがどうしても多くて。他の地区で釣れてくれれば幅が拡がるんですけど、今のところまだちょっと(季節の進行が)遅れてて、竹岡に依存しているところはありますね。魚は割りといると思います」
──ビギナーやスランプの人に向けてアドバイスは?
船長「カワハギ釣りは待っててもエサを盗られるだけだから、タタキを入れて、キチっと止めて、そっと持ち上げて聞き上げる、みたいのが初心者の方には良いと思いますね。ワッペン釣りはもう特殊技能みたいなところありますからね、真似しろって言ったって出来ないから。慣れてる人は午前中と午後の釣りを変えてたりしますし、一概には言えないですね」
トライ&エラーで手に付けるしかない「ムズ面白さ」こそカワハギ釣りの魅力。アタリが分かり易く、仕掛けの上げ下げも容易な浅場の釣りで、手がかじかむことのない今の時期からの入門は、最盛期を迎える冬場までにスキルアップする最適のタイミングと言えるだろう。この時期は凪も多く、ビギナーから中級者まで技を磨く格好のチャンス。また、替えバリは必携。50本を使い切る釣り人もいるので要注意だ。
釣趣も味覚も楽しめるカワハギ釣り
この日の竿頭は船中1尾目を獲った津牧さんの18匹。平均7~8匹、オデコ(釣果0)ナシという釣果だが、実はホウボウやシロギスなど様々なゲストフィッシュも上がっていてクーラーボックスは賑やか。みなさん笑顔の帰着となった。
とかく“肝パン”“海のフォアグラ”と肝臓の珍味が取り沙汰されるカワハギだが、この時期のカワハギが持つ身の食感と味覚は格別。もちろん、良型を釣れば充分なサイズの肝臓を持っているので、活きている内に血抜きし、締めた後、早めにクーラーへ仕舞う作法さえ気を付ければ、肝和えの滋味を楽しめる。薄造りや湯引きなどの刺身や煮付けはもちろん、唐揚げや塩焼きにしても美味しいので是非お試しを。
まだまだ陽射しの衰えない2025年の秋。こまめに水分補給をしながら、釣り味も食味も満たされる、東京湾の豊穣を満喫頂きたい。
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他
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