2026年02月24日公開
今回は、中部の山間に点在する山岳渓流が舞台。時期は6月中旬だが、雪代が落ち着いた下界は気温30℃を超え、まるで真夏の様相である。本作では、独自のフライ理論と技術を駆使し、渓流から海洋まで世界を釣り歩く杉坂研治が登場。長年の経験をもとに、源流域で求められる決断力や行動力を、実釣と解説を交えて伝えてくれるおすすめの回だ。
源流域でのフライフィッシングのハイライト
『ハイパーエキスパート 中部山岳渓流2024』/主演:杉坂研治
「虫の状況によって着き場が変わる。」
そう語る杉坂研治は、何度も訪れた渓であっても入念な安全管理を怠らない“真のエキスパート”だ。
夏の渇水期や雪代明けの増水時はイワナが釣りやすいが、今の時期は水生昆虫のハッチが終わり、捕食対象はテレストリアル中心へと移行する。釣りが一気に難しくなる局面に対して、トラウトバム視聴者なら深く頷くはずだ。
しかし釣りビジョンVODは、単なる情報の提示で終わらない。どうアプローチすればこの難局を突破できるのか、実践と理論を両面から提示してくれる。
情報過多の時代、初志がぶれた散漫な動画が増える中、無駄な消費を避け、山岳フィールドを主戦場とするアングラーの“知的欲求”にしっかり応えてくれるのが本コンテンツの価値だ。
視覚情報も豊富で、杉坂が指南したポイントを余すことなく吸収できる。実釣の臨場感と理解を促す構成は、まさに“至れり尽くせり”の内容となっている。
感覚と理論で難局を軽々と攻略する
「川の形がよくないな、渓相も悪い。」
そう言いながらも、杉坂は軽々とイワナを手繰り寄せる。視聴者が混乱するのも無理はない。
数日前の入渓者の痕跡を読み解き、イワナの状態を丁寧に確認する。ラインの沈下速度を一瞬で見抜き、すぐにフロータントを塗布。とくにフライライン先端をピックアップして固形フロータントを使うのは、ティップを沈みにくくするためだ。液体では川に溶けてしまうためである。
視聴者が誤った選択肢に迷わないよう、明確な発言を惜しまないのが杉坂の流儀だ。
「マッチ・ザ・ハッチはないね。ニンフで喰ってくる。釣りたきゃ何でもありだけど、魚がどんな喰い方をしてくるか想像しながら、自宅で巻いたフライに出てきてくれる方がいいね。出てくれる魚を探していこう。」
決定的な事実をはっきり示し、対応方法と捉え方を明確に伝えてくれる。本当に必要なのは大量の情報ではなく、先駆者の経験に裏打ちされた“導き”なのだと再確認させられる。
探求と我の追求──源流のマッチ・ザ・ハッチ
「夕立になると、葉についた虫が落ちやすくなる。アントが多くて、大きいフライへの反応が悪くなる。だんだん小さなアントを食う。スレもあるが。」
渓の状況を包括的に捉え、冷静にアセスメントする杉坂らしい視点だ。
視聴者の中には「フライフィッシングに興味はあるが、何から始めればいいかわからない」という人もいるだろう。かつての私もそうだった。画一的な“正解”ではなく、季節と流下物の関係を感じ取り、それを模したフライを使うことで、より深く日本の源流域に入り込む──それこそがこの釣りの魅力だ。
「今年のように早く渓流へ入れると、5月中にいい思いをした人が翌週も翌週も来る。有り得ないくらい入渓者が多く、魚が抜かれ、スレてしまう。過去7〜8年で一番ひどい。」
何気なく語られる冷徹な分析は秀逸だ。
源流域のフライフィッシングの在り方だけでなく、釣り人としてどのようにサステナビリティを体現すべきか──その示唆の重さに、感謝の念すら覚える。来たる“大源流時代”に備え、知識と技術の醸成を怠ってはいけない。
この記事を書いたライター
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