2026年06月06日公開
大分県日田市の高瀬川に行ってみた。ブラウントラウトの棲む川である。ブラウン狙いの釣人も多いけれど、老フライマンは渓に親しみながら可愛いヤマメと遊ぶのを楽しみとしている。深い渓を流れる川の瀬を、新参のカスタムロッドとウェーディングスタッフを頼りに休み休み釣り上ることにした。
ひとつ目の瀬とカスタムロッド
日田は既に猛暑日、まだ水がお湯にならない昼前に渓に降りた。渓を覆う森は新緑、ウグイスが「ケキョケキョ」と音を引いて谷渡り、鹿も鳴きあって釣り人の目と耳を喜ばせる。
いそいそとカスタムロッドを継ぐ。竿の潜在能力を存分に発揮させ、その結果をビルダー氏に報告することで「いい釣り人に譲ってよかった」と思ってもらいたい、そんな目的もある釣行だった。番手は3番で軟調だが、チタントップと細いスネークガイドに助けられてシャンと張って伸びている。ガイドのトンネルがでかいとラインが踊ってしまうのだが、部位に合わせて大きさが吟味されて並んでいる。節が多いと放物線が折線グラフになってしまうがこれは2本継ぎである。趣味の域を一歩も踏み出すことのなかったアマチュアビルダーだが、それでも生活の一部を削って打ち込んできただけあってなかなかのロッドぶりである。
渓に浸透して魚にたどり着くには情熱も体力も頼りなくなってしまい、最後にはやっぱり道具の力を借りなければならないのだ。どんな竿でも良い竿には「伸びる」気配があって、この竿も糸とともに竿がグーンと伸びて魚に届きそうな気分にさせられる。その届いた先に豆ヤマメが来た。日田漁協によると今季、稚魚の放流はないということなのでネイティブの子なのだろう。新子ということか。カスタム君の初めは豆ヤマメ、ちょっと笑ってちょっと心が動かされる。
ふたつ目の瀬でヤマメを掛ける
渓へ降りる途中でカワゲラ君が腕を這って来たので、ピーコックボディのEHC(エルクヘアカディス)を結んでみた。竿に導かれてループが解かれ、フワリと瀬に乗ったフライが岩陰にさしかかる。「パシャッ」と水が弾けてフライが消えた。竿を起こすと手応えがあって、糸をたぐったりハンドルを巻いたり、左手が忙しく往復し始める。躍動が竿から腕に響き、すくった魚が目に刻まれる。20cm超え、私には大物のヤマメだ。「やったー」、干からびたジイちゃんが喜びで水浸しになる。重かった足腰が無邪気に立ち直ってニコニコ軽くなる。あ、そうだ、朝に血圧とコレステロールの薬を飲むのを忘れていたのを思い出した。でも、このヤマメに優る効能はあるまい。
みっつ目の瀬でブラウンを掛ける
小さな滝が渕へ落ち、明るい渓を作っている。落ち込みの際からEHCを流してみる。すると、底からフワリと浮いてサッと沈んだ。大きいぞ、フライを替える。クリンクハマー14番。赤いコンドルクイルで巻いた、半沈のお尻が妖しく誘うのだ。だが姿を現さない。もてあそぶだけもてあそんで後は知らんぷり。ならば、ニシヤマ君が言っていた「困った時のミッジ」を結んでみる。ティペットもスギサカ君のウルトラストロングティペット8Xを繋いだ。あっという間に打つ手が払底してしまうので後はブランド頼りである。
フライが魚の頭上をたどるやいなや、パシャッ、フライが消えた。竿を跳ねるも「スコーン!」。魚以外の全部が空に揺れた。糸も身魂もプッツリ切れてしまい繋ぎようがない。疲れた身体を岩に置き、腰をさすり足を揉みして万事給水。長い影を引きずりながら川から離れようとした黄昏時、ふと巻いたばかりで使わないままにいたフライを思い出した。9回裏ツーアウト、代打、スティミュレーター選手の肩をポンと叩いて送り出すと、起死回生のホームランを放ったのであった。
瀬の開きで黒い影が走ったと思ったらフライを跳ね飛ばすようにライズした。あわてて竿を立てる、糸が伸びる、フライが魚の口を拾う、魚の反抗が肘まで伝わる、ビンビン来る。ようやくすくった魚の白い縁取りの朱点が側線周りに散っている。ブラウンだ。20cmほどの魚体だった。小さいとはいえ、昔、養魚場から放された魚が、狭い限られた渓の分泌物だけで代々生を遂げていたのだ。
渓から離れ、岸辺に腰を下ろす。この日、カスタムロッドが掛けた魚の顔を思い浮かべながら久しぶりの幸せな日を反芻する。ビルダー氏には「この記事を見てくれ」とだけ報告した。
施設等情報
日田市では筑後川が三隈川と名を変える。三隈川の支流、小野川、上野川、赤石川、高瀬川、内河野川の五河川はどこもヤマメの放流が行われているので、福岡県の都市部から最寄りの釣場として多くの釣り人が訪れている。とくに高瀬川はブラウントラウトの棲む川としてルアー、フライとも人気の河川である。
初めて訪れる人は、管轄している日田漁協のHPに掲載されている管内マップ(鮎、山女魚放流場所)を参考に。漁協の応対も懇切で丁寧である。
【日田漁業協同組合】
住所:大分県日田市大字高瀬字小シマ1166-3
電話:0973-22-4021
HP「日田漁業協同組合」管内マップ
施設等関連情報
※観光地として長い歴史を持つので宿も漁協も釣具店も、それに魚たちも優しく接してくれます。釣りと温泉が一緒に楽しめますので、一度お越しになってはいかがでしょうか。
この記事を書いたライター
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