2026年10月23日公開
2014年、テニス全米オープンで日本人初の準優勝に輝いた錦織圭選手が「帰国後に食べたい」と語り、一躍その名を知られることとなった〝ノドグロ〟こと「アカムツ」。巷では「幻の魚」「赤いダイヤモンド」と珍重される高級魚だが、茨城県波崎沖では今年も連日のように規定数(1人8匹までの自主規制)達成者が出ているとの情報が。この好機を逃すまいと、秋の波崎港『仁徳丸』を訪ねた。
波崎港『仁徳丸』にアカムツファン集結!
『仁徳丸』が発着する波崎漁港は、千葉県と茨城県を結ぶ「銚子大橋」のほど近く。ナビへ「青木屋旅館(神栖市波崎9495)」と入力すれば、目的地の手前右手に『仁徳丸』の看板が見えてくる。
この時期の集合時間は午前4時30分までだが、3時過ぎには釣り人の車が船着場へ続々と到着。船縁に、竿や目印の棒などを挿して釣座を確保していくのは、いつもの光景だ。4時過ぎには船長と女将が到着し、操舵室後方の屋根付きデッキで受付開始。乗船名簿に記入して船代を支払い、エサとなる冷凍ホタルイカを受け取る。氷は船尾のクーラーから各自バケツで取り、自席のクーラーへ。『仁徳丸』では帰港後にも氷を追加できるため、朝の時点では飲み物を冷やす程度の量を入れておけば十分だ。
仕掛けのセットは釣り場に着いてからでも問題ない。釣座へ道具を積み込み、エサを桶に入れれば出船準備は完了。釣り人たちはリクライニングシート付きのキャビンへ入り、しばしの休息を取る。準備は滞りなく整い、午前4時45分。「第七 仁徳丸」は、まだ夜の色を残す海へと出船した。
寒猫根で1投目からアカムツ連発
小1時間で到着したのは、波崎沖を代表するアカムツ釣り場「寒猫根(カンネコネ)」。まずは水深120m前後からスタートした。船長のアナウンスを合図に一斉に仕掛けを投入すると、早々に右舷トモ(船尾)の岡野さんにアタリ。実は岡野さん、昨年取材にお邪魔した際にも船中1匹目のアカムツを仕留めていた。この日も見事、1投目から「本命」を手にしてみせた。
幸先の良いスタートに続き、手の合った釣り人からポツリ、ポツリとアタリを捉え、船上には電動リールの巻き上げ音が響き始める。今シーズンは例年と比べてサバに邪魔される場面も少なく、キープするのを躊躇するような小型魚もほとんど見られない。それぞれの釣座で根気よく誘いを繰り返しながら、本命の数を伸ばしていった。
印象的だったのは、船中の誰かにアタリが訪れると、ほぼ同じタイミングで別の釣座でも竿先に魚信が見られること。群れの上を通過しているのか、魚の活性が上がるタイミングなのか。いずれにせよ、この短いチャンスを逃さず、エサを付け換え、誘いを入れ、仕掛けをアカムツの泳層へ送り込める釣り人が、着実に釣果を積み重ねていった。
そして、寒猫根の魅力は本命だけではない。取り込まれる魚はアカムツのほか、アマダイ、ホウボウ、ムシガレイ、ドンコ(チゴダラ)、オキメバルと、食べて嬉しい魚ばかり。昨年は、サバが釣れ過ぎて対策を講じたほどだったが、今シーズンは困るほど数も多くない。それでも時折交じる45cmクラスの丸々としたサバは、釣り味も食味も抜群だ。
水深100m超。アタリを捉えてから魚が海面へ姿を現すまでには、しばしの時間がある。「今度は何が掛かった?」と電動リールの数字を眺めながら、100m以上の巻き上げをワクワクしながら待つのも、アカムツ釣りならではの楽しみのひとつだ。
『仁徳丸』船長に訊くアカムツ攻略のコツ
波崎沖・水深110m前後と130m前後の浅場を攻略したこの日。アカムツ釣りのコツを『仁徳丸』三橋正幸船長に訊いた。
──寒猫根の浅場でのアカムツ、いつ頃まで楽しめそうですか?
船長「まだ今年はやれるねえ。11月に入ってもやれると思うよ。たまに二枚潮でヘンな潮の時があるんだけど、そんな時は150号で」
──今シーズンのアカムツ、例年に比べていかがですか?
船長「まあまあ安定してますね、うん。サバはここずっと少ないです。エサに足りないくらいですね」
──アカムツ釣りのコツ、アドバイスは?
船長「ステイトは、今のところ1mか1.2mが合ってる気がするんだけど、まめに調整して。あと今、飾りもあんまりこう、いっぱい付けるのも善し悪しで、それを嫌ってる場合もあるんで、自分だけちょっとアタリがないなと思ったら、そういうところも考えてみて、といったところですね」
取材日も、潮が速くなったタイミングでは、アクセサリーの多い仕掛けほど潮を受けて流されやすい傾向が見受けられた。夜光玉やパイプ類、マシュマロボールなどは、魚へのアピールという点では有効なアイテムだが、「付ければ付けるほど良い」とは限らない。周囲とのオマツリを防ぐ意味でも「どうも自分だけアタリが遠い」「仕掛けが必要以上に流される」と感じたら、装飾類をひとつずつ外してシンプルに。そうした選択肢も、アカムツ釣りでは大切な〝引き出し〟として持っておきたい。
ライトタックルで楽しむ波崎沖アカムツ入門
かくして、左舷トモの田中さんは良型ばかり8匹を揃え、見事この日の規定数一番乗り。最終的には3名が規定数を達成し、船中平均は4匹。スソの方でも2匹を手にして、船中オデコなしという好釣果となった。さらに多彩なゲストも加わり、クーラーは秋らしく色とりどりの魚で賑わった。
オモリで底を確認しながら積極的に誘い、時に仕掛けを止めて〝喰わせの間〟を作る。その小さな工夫が竿先のアタリとなって返ってくる、繊細で奥深い釣り。それに加えて、帰宅後に待っている格別の食味。皮を引いた刺身はもちろん、皮目を炙れば濃厚な脂の旨味が際立つ。煮ても焼いても文句なし。この魚を自ら釣り上げて味わえることも、アカムツ釣りを楽しむアングラーだけの特権だ。
現在の寒猫根は、水深110~130m前後とアカムツ釣りとしては比較的浅く、魚影も濃い。深場の釣りに比べて仕掛けの投入や底取りもしやすく、これからアカムツ釣りを始めてみたい人には好条件が揃っている。三橋船長も「まだ今年はやれるねぇ」と太鼓判。その言葉を裏付けるように、取材後にも「アカムツ最大35cm、6~8匹、オデコなし」という驚きの釣果情報が届いた。この好機を逃さず、海の〝収穫の秋〟を味わいに、ぜひ波崎沖・寒猫根へ足を運んでいただきたい。
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他
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