荒井「あえて軟らかめの竿で、弾かずに”しっかり1枚ずつとっていく釣り”が理想」1枚も逃さず自ら掛けていくという、ハイレベルな理想だ。そんな荒井だからこそ、という場面があった。カワハギを釣った直後のことだ。荒井「やっと掛かりましたね。ず~っと触ってたんだけど、他の魚と半々くらいでアタっていて。(釣れて)よかったけど、でも納得いかないな…」他の魚とカワハギのアタリを感じ取って、しっかりとカワハギを掛けたにも関わらず、納得がいかない様子。荒井「アタリは取れてて、確かにちゃんと掛けるところまでできたんですけど、どこで喰わせようか考えていた時に、アワせられるアタリがきた。魚の動きを全然制御できてないという意味では、あまり気持ちのよい1枚ではなかった」正直、エサ取り名人の異名を持ち、一般的にわかりづらいと言われている、カワハギのアタリを選んで掛けることができれば充分だと思うが。荒井「最初から最後まで自分の思い通りに掛けられないと、海中のイメージと自分の釣りが一致したと言い切れない。釣れたから良しとしますけど、今の魚は30点か40点。まぁここから修正していきたい」荒井のパフォーマンスと考え方はどこまでも高いところにあるのだ。実はこの日、竿頭として渋いながらも10枚釣り上げたのだが、また別のカワハギを釣った時のこと。荒井「上と下のハリは完全にアタリは取れていた。ただ、掛けられるようなアタリじゃなくて。真ん中のハリを揺らして揺らして止めて、なんとか手に僅かにチッと伝わるか伝わらないかくらいのアタリで無理やりアワせた」超ハイレベルなやり取りが詰め込まれ過ぎなので整理すると、魚がどのハリにアタっているかわかっていて、その上でどのハリに喰わせるか計算して仕掛けを動かし、その通りにカワハギが喰ってきて、その微細なアタリを掛けたということだ。ただただ驚くばかりだが、残念ながら最後の”無理やり”というところで、荒井的には点数減。これでも理想的な魚、釣れ方ではないらしい。理想の1枚を求めて、荒井良乃介は今日も海の中へと思考を巡らせていく。