「なかなか追わないですねぇ」木漏れ日の中、のびのびとキャストする気持ちさは釣り欲を掻き立てる。同時になかなか渓魚が姿を出してくれない点に「こい、こい、追ってはない」と切実な発言が出ることで、リアルな釣行がひしひしと伝わる。ヒット時「ありがとぅー!」と興奮しながらも、ヤマトイワナへの負荷をなるべく軽減させようと手をしっかり濡らしているさりげない配慮は、ネイティブトラウト達を相手取る覚悟がにじみ出ている。「かわいいサイズだけど、釣れただけで感謝」。という発言には好感しか持てない。サイズがあり写真映えするような個体ばかりにしか興味を示さず、口だけで綺麗事を並べるアングラーは実際多いのが事実。私も大勢見てきたし、行動と結果を示さないことからも山岳渓流釣りへの向き合い方が容易に露呈する。番組内の橋爪氏は、おもむろにカメラを取り出し一匹一匹真摯に向き合っている。普段から写真も楽しんでいるのかという質問に対して「綺麗なのが釣れたら写真に収める。それもまた釣りの楽しみですねぇ」。と笑う姿。探索的な回答ではなく説明的に直ぐにレスポンスできるのは、普段から感じていることであり誤魔化しはない点も魅力的だ。共に岳都である松本市で釣り談義を楽しんだことのある私から見ても、釣りビジョンVODの番組を意識した緊張感が伝わるが、山岳渓流を取り巻く情熱は変わらずストレートに飛び込んでくる。自然の中へ身を投じ目の前の出来事に持てる知識と技術を駆使して、「釣り」を楽しむ〝トラウトバム〟の姿を是非見てほしい。