この時期のタチウオ釣りについて、幸田船長に聞いてみた。道糸が1号ならオモリは60号、2号で80号、3号で100号、4号で120号を使うことと、“底から何mまでを探って”という指示タナを必ず守る。シャクッた後、竿先に集中して、アタリがあったら食い込むまで待つ。アタってハリ掛かりしなかったら、仕掛けを回収して餌のチェックをする。よく釣れている人のシャクリ方やリズムを真似たり、魚の掛かった水深を聞くことは恥ずかしい事ではないのでどんどんやること。また、なるべく2本バリの仕掛けを使って、食いの立つ時合に2尾掛けを狙うことがキモだそうだ。特に深い水深を狙うこの時期は、仕掛けの投入・回収の回数が浅場の釣りより格段に減るので、ハリ数の違いが釣果に表れやすい。2隻出しとなった取材日は、餌釣り師だけが乗船した1号船ではオマツリが少なく、主に2本バリを使う事によって概ね1.5倍の釣果をあげていた。また、オマツリやタチウオの歯による道糸の高切れもよくある釣りなので、道糸やリールの予備を持参すれば転ばぬ先の杖となるだろう。食味も絶品なタチウオかすかなアタリからハリ掛かりまでの繊細な攻防と竿を引き絞る力強いファイト。その釣り味も魅力だが、この時期のタチウオは食べても素晴らしい。刺し身、カルパッチョ、塩焼き、ムニエル、煮付けにアクアパッツァと和洋中どんな料理にもマッチする淡泊でクセのない味わいと、ジューシーで豊潤な脂質。特に1mを超える大型は、味わいが格段にアップするので、同じ群れの中でも泳層を見極めてサイズアップを狙って釣るのも面白い。寒さが増すにつれサイズも旨みも一層増すタチウオ。ナギナタと七つ道具で“千本刀”の刀狩りを目指した武蔵坊弁慶よろしく、釣り竿と電動リールを武器に、東京湾の太刀魚狩りをぜひご堪能して頂きたい。