この日の水深100mエリアは潮の流れがあまりなく、着底やアタリを取るには好都合だがマダイの食いは決して芳しくなかった。そこで船長は釣り場の移動を決断。30分程走って水深55mから緩やかに駆け上がるポイントへと大きくサイドチェンジを試みた。一同の竿には深場の釣りのために大きめのテンヤが付いていたが、このセッティングがやがて功を奏することになる。移動先のエリアは海水温が高く、潮の流れは速かった。深場のポイントと状況は逆だが手段は合致し、釣り再開から僅か10分、様子見のために仕掛けを入れていた船長にアタリが出るや否や左舷ミヨシの海老沢二郎さん(葛飾区)の竿が一気に海面へ絞り込まれた。慎重なファイトの末に海面へ浮かび上がったのは2.7kgの良型マダイ。誕生日に息子さんが竿をプレゼントしてくれたのを機に、テンヤマダイを始めた海老沢さん。初めて手にしたマダイの重みに会心の笑みがこぼれた。大原のテンヤマダイ、本番はこれから!「今年の状況はあんまり良くなかった。浅場にタイが少なくて、深いところを始めたんだ」と、名物のディープエリアの釣りを飾らずに語る坂下隆一船長。「最後に入った所みたいな水温が高くて速い潮が入ってくれば楽しみ。これからなんじゃないかな」そう言って笑う船長は、言葉少ないが釣り人を思う心意気が折に触れ感じられた。まだまだ開拓されていない黎明期の深場の釣りと、浅場に期待される一つテンヤならではのスリリングな釣り。どちらも楽しみたいなら、早めに大原へ行くことをお薦めしたい。