「カイワリの居るところは分かっているので、潮が止まってくれさえすれば釣れる」と語る早川忠信船長に、この釣りのコツを訊いた。「コマセを撒くように竿を強く振ると食わないんですよね。仕掛けを底に這わして、そっと誘うような感じですね。潮が動かないときは5mくらい上げてきても食うことがあるんですが、基本的には底を釣ります」とのこと。駿河湾などで定番のウイリー仕掛けを派手にシャクるカイワリ釣りとは釣法が180度異なることを明記しておこう。数字では伝えきれない満足感かくして、この日のカイワリの釣果は4~9匹。釣果情報でこの数字を見ると決して派手さはないが、釣り人たちのクーラーはバラエティ豊かで賑やかだ。この日の竿頭は田中直樹さん(北足立郡)。「前に来たとき(カイワリ)は2匹しか釣れなかったんですよ」と見せてくれた24Lクーラーは、氷を入れたらほぼ満タン。「家に帰ってからも楽しみですね」と恵比寿顔。ご自宅まで3時間の家路も、あれこれ献立を考えていれば時間が足りないくらいではなかろうか。海から眺める景観ものどかで美しく、穏やかな船長やユーモアのある女将さん、親切な常連さんたちに心和む『佐衛美丸』。カイワリのご機嫌は全く以て潮次第だが、万が一奮わなくてもきっとまた来たくなる、癒やしのフィールドだ。