さて、オトリをつかんで鼻カンからサカサバリまでの手順を一通り伝え、後は任せて私も竿を出す。もうすぐ還暦の若造だが、ほかの釣りの経験はしっかり詰め込まれていて、多少もたつきながらも、なんとかオトリを潰さずに瀬に放すことが出来たようだ。「糸は緩めるな」と言っておいたが、お利口さんに守って泳がせている。よしよし、と見ていたら掛けた。ギンギン竿を曲げて、逸走する野アユを竿を抱くようにして堪え、寄せたかと思ったらジャブとタモで掬った。獲った。でかした!銀色に輝く見事なアユだった。最初の1匹としては最高だ。文句無し!縄張りを持ったアユがいくらかいたのか、暫くしてまた掛けた。中々やるじゃないか。もう一つ上の瀬に動いて数匹掛けたが、1匹はこの日一番の大物だった。昼過ぎ、追いが絶えてようやく新人の白熱の一日は終わった。「また是非お願いします」という弾んだ声を聞いて、古希ジイ、嬉しくて嬉しくて。実は前回一緒に海釣りを楽しんだ時、頑張る若者をおいて私一人近くの温泉に行っていたことがあって、ちょっぴり恨みを買っていた。だが、ここでようやく「恩讐の彼方に」友釣りが完遂されたのである。めでたしめでたし。