釣りビジョン

2016.7.1号

しまや丸・千葉県乙浜港
千葉・南房総の“キントキ根魚五目”高級魚がズラリ!

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釣り人目線で見れば“メジャー”な釣魚でも、鮮魚店に並ばない魚は多い。カイワリ、ホウボウ、各種カサゴ、オニカサゴ等々、こうした魚に限ってどっぷり漬かったマニアックな釣り師がいるものだ。「あんたも好きねぇ」的な魚種の一つが“キントキ”ことチカメキントキだ。そのキントキを中心にした“五目釣り”乗合船があると聞きつけ、千葉県・房総半島の南端、乙浜港『しまや丸』を訪ねた。

釣り味と食味にファン続出!?

キントキとは「金太郎さん」のニックネームでお馴染み、坂田金時のイメージカラー“赤”に因んで命名されたと言われ、同じく赤い衣装が印象的な歌舞伎『景清』から“カゲキヨ”と呼ばれたり、坂田金時の別名・坂田金平から“カネヒラ”という地方名も持つ。英語名は「Longfinned bullseye(ロングフィン・ブルズアイ)」。“ブルズアイ”には様々な意味があるのだが、昭和風に翻訳すると「ヒレ長のギョロ目ちゃん」。その名の通り、ゴージャスな胸元と底知れぬ深い瞳が印象的なチカメキントキは、ジルバのようなド派手な釣り味と、一皮剥けば見目麗しく上品で淡泊な食味のギャップに射貫かれる釣り師が後を絶たない。
午前4時。『しまや丸』の船着き場に到着すると、集合時間の30分前だというのに、いかにも“好きそうな方々”が船長が来るのを待ち構えている。予約者全員の乗船を確認して、「第三しまや丸」は出船予定時刻よりちょっと早めに離岸した。

船宿から駐車場&船は目の前
乗船は船長が到着してから
片舷5人、ゆとりの釣り座で出船

一流し目からアタリ活発

穏やかな海を走ること30分ほどで最初の釣り場に到着。船長は、暫し魚群探知機で魚を探して水深80mのポイントからスタートした。「70mぐらいで釣ってください」のアナウンス。タナを合わせるとすぐにアタリが出始めたが、魚からのシグナルは数多あれどハリ掛かりしない。そんな膠着状態を破ったのは「キントキは初めて」という斉藤裕子さん(小金井市)。首を傾げる腕利きのみなさんを横目に手にした、これぞまさに“ブルズアイ(大金星)”。曇り空の下、明るい笑い声が釣り人たちを鼓舞した。

餌は冷凍イワシが配布される
船中1匹目を釣り上げた斉藤さん
吸い込まれそうな瞳

“キントキ”に魅せられて…

「釣りは大体“キントキ”だねぇ」という左舷ミヨシ(船首)の渋谷豊さん(我孫子市)は、「“キントキ”は美味しいし、面白い」と端的に魅力を語るところがなんとも筋金入りの“キントキ”フリーク。ちなみにお好きな食べ方は“刺し身”と“バター焼き”。このあたりのチョイスも“ブルズアイ(図星)”だ。
右舷トモ(船尾)で釣っていたのは山崎孝さん(足立区)。5年前に『しまや丸』のキントキ五目と出会ってからこの釣りの虜となり、月に2回は乗船するそうだ。根魚のポイントでは枝バリのハリスを長くしたり、吹き流しの仕掛けにチェンジしたりと、通い詰めた釣り師のテクニックが光っていた。
こちらのお二方といい、取材当日の雰囲気といい、『しまや丸』の印象を一言で言えば“穏やか”。キントキ好きな釣り人の傾向なのか、そういうタイプの釣り師が集う船宿なのかは定かでないが、サバでオマツリが頻発した際も淡々と、かつ温かく対処していて、ほんわかムードが常に漂う船上だった。

「美味しいし面白い」と渋谷さん
キントキ一筋の山崎さん
時にはこんなに釣れることも

釣れぬ魚に餌を選ぶ

餌は、船で配られるシコイワシや小サバでも充分釣れるのだが、それぞれの釣り師が独自に持ち込む付け餌もバラエティに富んでいた。サバの短冊(いわゆるサバタン)や、イカそうめんサイズのイカタン、オキアミ、バイオベイトなど、見ているとそれぞれの餌にそれぞれの成果が出るのが面白い。
イカタンで数を伸ばしていたのは鈴木忠さん。「アタリがあるのに餌が付いたまま上がってくるのは、餌のサイズが大き過ぎるのでは」という読みは見事的中。食い込まなかったアタリを釣果へと結びつけた。

アタリはあるが食い込まない時…
釣れたサバを捌いてサバタンに
イカタンが功を奏した鈴木さん

“キントキ”五目の豪華なゲストたち

結果、この日のキントキの釣果は0~4匹。数字だけ見るとシーズン序盤の控えめな釣果にも見えるが、本命を手に出来なかったのはわずか1人。しかし、その人は良型のカサゴやオキメバルをゲットしていて、クーラーの中身はお土産に充分の釣果だった。この日に釣れた魚は、オキメバル、ヒシダイ、アジ、サバ、クロムツ、メダイ、オニカサゴ、オキカサゴ、ユメカサゴ、カンコ(ウッカリカサゴ)、アカイサキ、トンビギス、キツネダイ…と楽々の“十目”超え。更にこの日は上がらなかったがイシナギと思しきアタリもあったし、ホウボウ、マハタ、アカハタ、マダイも交じると言うから見逃せない。沢山釣れればそれはそれで楽しいが、様々な魚種(しかも味に定評のあるものばかり)と出会える楽しみがあるのも、この釣りの大きな魅力のひとつだろう。

素晴らしいファイトのメダイ
47cmもある良型のカサゴ
数より多彩さが魅力の釣りだ

最盛期はこれから!

秋まで楽しめるという“キントキ根魚五目”。船長にコツを尋ねると「なるべく手持ちで釣ること」と、大物ほどバレやすいので「手持ちでゆっくり巻き上げること」。また「食い上げるアタリが出たら何mかは手巻きで追い食いを狙うこと」だそうだ。
取材日には水深70~100mの釣り場を狙ったが、浅場にも根回りの好ポイントがあり、その際はオモリを40~50号、仕掛けは一回り細めのカサゴ仕掛け(詳しくは5/22「キャプテンズレポート」を参照)で釣るので、“キントキ”用の80~120号を中心に、幅広く沢山のオモリを持参すれば、根掛かりを恐れず多彩な“攻めの釣り”が展開できるだろう。
釣って楽しく、食べて美味しいチカメキントキと各種根魚の高級五目乗り合い。最盛期はまだまだこれからなので、夏の釣り物候補に強く推薦したい。

気さくで親切な島野一男船長
この日はオモリ120号で通した
仕掛け図

煮ても、焼いても、炙っても

君の瞳に乾杯♪
ここで「キントキはウロコ取りが面倒」と眉をひそめるあなたに朗報。この取りにくいウロコ、落とさなくても皮は引けるし、煮物にしても煮汁にほとんど落ちないことが判明。さらに挽いたウロコ付きの皮は、唐揚げにすると絶品だ。肝や胃袋も珍味だし、アラからは上質な出汁が取れるチカメキントキ。煮付けても西京漬けにしても、刺し身にして皮目をバーナーで炙っても非常に美味だが、おろす前にトレードマークの腹ビレと、鋭いトゲ状の背ビレと尻ビレを料理バサミで切り落とした方が安全で調理しやすくお勧めだ。冷蔵庫で2、3日寝かせると旨みが一層増すので、是非その味の変化もお楽しみ頂きたい。

(釣りビジョンAPC・川添法臣)

今回利用した釣り船
千葉県乙浜港『しまや丸』
〒295-0101 千葉県南房総市白浜町乙浜1304
TEL:0470-38-2567
定休日:第2・第4水曜日
詳細情報(釣りビジョン)
しまや丸ホームページ
出船データ
キントキ根魚五目
料金:1万円(付け餌、氷付き)
集合:4:30 出船:5:00 沖上り:11:30
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