釣りビジョン

2017.3.1号

広布号・千葉県大原港
千葉・大原沖のBigマダイは『イワシトルネード』で攻略!

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『イワシトルネード』。知らない人が聞くとゲームの必殺技か何かと勘違いしてしまいそうな響きだが、これはれっきとした“大ダイ”狙いの必殺技なのだ。この釣法に早くから精通し、このところコンスタントに結果を出している大原港『広布号』に2月18日、出掛けた。

マダイはフィッシュイーター

「エビでタイを釣る」という諺もあるが、一つテンヤ、コマセマダイ、ビシマなど、多くのマダイ釣法は餌にエビを使う。しかし、マダイは本来雑食で、特に大型になるとイカや小魚などを積極的に追い掛けるフィッシュイーターとしての顔を見せる。大原沖の浅瀬では、この厳寒期から春にかけてイワシが浅瀬に群れを成し、そのイワシを追い掛けてヒラメや“大ダイ”などが集まるため、『イワシトルネード』の好漁場と化す。

午後からゆっくりでも…

船に乗る前から準備に余念なし
大原港の多くの船宿が、午後からも一つテンヤをはじめとする「マダイ釣り」の船を出す。千葉・外房伝統の朝が早い「午前船」に対し、集合も正午前の「午後船」は、ゆっくり出掛けても十分に間に合うので非常に体に優しい。釣行予定日の波風予報に合わせて、午前か午後かを選択できるのも良い。釣果も午前は良かったが午後は…や、その逆もよくあるパターンなので、しっかりと釣行前に天気予報や、最近の釣果をチェックして選択すると良いだろう。

港で会計、乗船名簿記入を済ませて乗船
スピードが出る広布号。イワシの動きに素早く対応した釣りが可能
最終チェックを済ませていざ出船

釣り座はクジ引きで決定

ベテランたちの釣り方情報交換
釣行前日は“春一番”による大シケ。この日は反転して北風が強く、波も高い予報で出船をも危ぶまれる状況だった。しかし、ここ数日間“大ダイ”の実績が続いている事もあるのか、午後船出船定刻の30分前、午前11時には予約が入っていた6人全員が揃い、入念にタックルの準備をしていた。定刻の11時30分に野島幸一船長と女将さんが到着、恒例のクジ引きで釣り座を決定していざ出船。

“探見丸”で水深、反応を常にチェック
イワシトルネードに精通した野島幸一船長
タックルは一つテンヤ用

想像以上の風とウネリに苦戦

大原港は港のすぐ外が浅瀬になっていることもあり、北や東向きの風の時などはウネリが入りやすい。しかし、それを差っ引いてもこの日のウネリは大きかった。予想以上に風も強い。釣りにくいという以上に心配なのがイワシの動向だ。この釣法はイワシの群れがいないことには話にならない。いつもなら浅瀬に集まるイワシだが、これだけうねっていると底荒れも心配だ。大きな不安を抱きながら船は南へと舵を取った。

タックルは一つテンヤと同じ

“スイミングテンヤ”が主流
ここでタックルをご紹介しよう。まずロッドとリールだが、一つテンヤのもので良い。0.8~1号のPEラインに2.5号のフロロカーボン5mほどのリーダー。その先につけるのはカブラタイプのテンヤ(4~6号)かスイミングテンヤなどのジグヘッド(20~30g)。餌の代わりに“スイムシュリンプ”などのワームを装着する。テンヤのエビでも対応はできるのだが、どうしても頭が取れやすいという欠点がある。釣り方はジグヘッドの場合は“ただ巻き”で一定速に巻いていればよい。それに対して、テンヤ系はリフト&フォールなどのアクションを加えた方が良い様だ。イメージとしてテンヤ系が縦に探るのに対し、ジグ系は横に探る釣りだ。最近流行りの“マイクロフリップ”という小さなジグを使用している人も多い。

合わせるのは“スイムシュリンプ”などのワーム
この日は結局使わなかったがこんな感じ
仕掛け図

イワシの群れが全くいない…

大原港から南に舵を切った「広布号」だが、御宿港方面まで幅広くイワシを探し回る事1時間半。不安が見事に当たってしまい、いるはずのイワシの群れがどこにもいない。前日の大シケに加え、朝から吹き続ける北風の影響で、想像以上に底荒れしてしまっているようだ。イワシとセットでいるはずの鳥の群れもどこにも気配がない。イワシがいないことにはこの『イワシトルネード』の必殺技も全く使うことが出来ない。さすがの船長もこれでは打つ手がない。

一つテンヤに変更

テンヤエビのお出まし。船に積んでいます
この状況では『イワシトルネード』を諦めざるを得ず、一つテンヤに変更。『広布号』では、こうしたケースも想定してテンヤ用のエビも船に積んでいるので安心だ。水深20m前後のポイントでこの日最初の1投となった。波があるため底が取りにくく、予想以上に釣りにくい。この状況ではアタリを取るのも困難だ。しかし、この日の6人の釣り人は全員がベテラン。このような状況にも関わらず、小さいアタリを拾っていく。しかし、アタリが小さい…すぐさまその犯人が分かった。明らかにマダイとは異なる引きで、船中ちょくちょく上がってくるのはいずれもウマヅラハギ。なかなか“本命”は顔を見せない。

海底は反応でビッシリ
この日最初の“本命”です!
右舷でも続けざまに同サイズ

“本命”連発!

釣り始めて30分ほど。やっとマダイ特有の“三段引き”が右舷に訪れた。左舷にいた私は高いウネリのため取り込みに間に合わなかったが、600gほどのサイズだったが、この日最初の“本命”。続けざまに左舷トモ(船尾)でも同じく600gほどのマダイが取り込まれた。確実に潮が動き始めている。ここで左舷トモの吉田裕樹さんに再びアタリ。ロッドが今までよりも大きく弧を描いている。竿先を叩くその引きは紛れもないマダイ。期待が持てる。上がって来たのは1.2kg級の“中ダイ”だった。

1.7kgの良型が顔を出す

1.2kgの堂々サイズ 
この日最大のハイライトが、この後に右舷トモに訪れる。周りが一つテンヤに替えてウマヅラハギと遊んでいる中で、かたくなに“マイクロフリップ”にこだわり、虎視眈々と“本命”のみを狙っていたのが吉と出た。先ほどの吉田さんよりも更に一回り大きそうな強い引き。心地よいドラグ音が響く。慎重なやり取りの末に上がったマダイは堂々の1.7kg級。『イワシトルネード』の中からではなかったが、初志貫徹の“マイクロフリップ”で掛けたことに価値がある。うれしい1匹となった。この後はウマヅラハギや小型のマダイのアタリこそ絶え間なく訪れるものの、残念ながら“型物”を見ることは出来なかった。しかし、時合をしっかりとモノにした1kgオーバーの“本命”2匹はこの悪状況の中では充分以上の好釣果と言えるだろう。

この日最大サイズに「どうだ!!!」
釣りたてマダイの美しい顔
「広布号」は関東では珍しくトモ(船尾)からパラシュート投入

イワシが戻れば期待大!!

この日はウネリによる影響で、期待した『イワシトルネード』からの結果を出すことは出来なかった。しかし、それも自然を相手にする釣りの楽しさでもある。連日の釣果を見ると、このウネリが取れればまた“大ダイ”乱舞となる事だろう。大原沖のイワシの群れは5月まで続くそうだ。『広布号』では、イワシがいる限りは『イワシトルネード』を続けるそうなので、この機会に“大ダイ”釣法の必殺技を習得してみてはいかがだろうか。

(釣りビジョンAPC・丸岡直樹)

今回利用した釣り船
千葉県大原港『広布号』
〒298-0004 千葉県いすみ市大原7528
TEL:070-3526-1091
詳細情報(釣りビジョン)
広布号ホームページ
出船データ
一つテンヤ・マダイ、イワシマダイ予約乗合
料金:午前船午後船ともに1万2,000円(餌込み、氷付き)
午前船 集合午前4時30分 準備出来次第出船 11時沖上がり
午後船 集合午前11時30分 準備出来次第出船 日没沖上がり  (電話確認)
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