釣りビジョン

渡辺丸・千葉県江見太夫崎港

2017.7.15号

千葉県・南房総で高級魚・アカムツにチャレンジ!!

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テニスの錦織圭選手が、「帰国後に食べたい」とコメントしてから一躍メジャーなったノドグロことアカムツ。刺し身、煮付け、干物等何しても美味しく、その希少さ故に市場価格も高い筋金入りの超高級魚。そんなアカムツを釣らせる名物船長が居ると聞き、千葉県、外房・江見太夫崎港『渡辺丸』に出掛けた。

“道の駅”『鴨川オーシャンパーク』が目印

江見太夫崎港は、館山自動車道・君津ICを降りて1時間弱。鴨川から館山方面へ8kmほどの位置にある。カーナビには“道の駅”『鴨川オーシャンパーク』と入力するといい。この日の集合時間は午前4時。車が乗り入れやすく、荷物の積み降ろしが楽な集合場所に「第十 渡辺丸」は着岸した。船長が釣り座を割り振り、餌のホタルイカと氷が配られて、滞りなく4時30分に出船した。

集合時間に船が着く
船着場は漁業組合の建物の前
4時30分、夜明けと共に出船

ゆったり釣り座ですこぶる快適!

この日は右舷3人、左舷3人で出船。他の釣り人と仕掛けが絡むオマツリも多い深場の釣り。予約の多い週末も8人限定で締め切っているとのことで、気持ちよく釣りをするための気配りが感じられる。穏やかな海を走ること凡そ30分、水深213mのポイントから竿入れとなった。
最初に魚を取り込んだのは、毎週通っていると言う常連の穴澤準さん(大田区)。釣れたのはアジとゴマサバ。この後、あちらこちらで竿が曲がるのだが、いずれもサバか小型のサメで“本命”が上がらない。その中で穴澤さんだけがアジやクロムツを取り込んでいるのでコツを尋ねると、餌にサバの短冊を食用色素で緑色に染めたものを使用していると言う。「サバが多いとき、サバ避けになる」とのこと。

釣り場までアカムツの生態を教えて貰った
アジやサバの反応の下に、アカムツが居る
海上で日の出を迎える
仕掛けの投入は丁寧に
サバ避けに成功した穴澤さん
穴澤さん仕込みの緑色に染めたサバタン

積極的な誘いが決め手

左舷ミヨシ(船首)の穴澤さんが、クロムツを上げた10分後、右舷トモ(船尾)の高野康信さん(渋谷区)にこれまでと違うアタリが来た。海面から50m付近で再び竿先を叩き、船長のタモ入れで取り込まれたのは40cm、1kg弱のアカムツ。「竿先を上げて誘いを入れて、落とし込む途中でアタリが出た」とのことで、イカ釣りのような積極的な誘いを根気良く続ける努力が功を奏したようだ。実はこの3時間後、潮の変わり目にも“本命”を釣り上げ竿頭となった高野さん。竿を煽った後、餌をゆっくりと沈ませるという同様のパターンでアカムツに口を使わせていた。ちなみに餌は船宿のホタルイカと、持参のサケ皮を使用。

見事、アカムツを手にした高野さん
40cm前後の良型がアベレージサイズだ
アカムツの口は脆い、巻上げは慎重に

釣果に載らないゲストフィッシュたち

希少な魚を“本命”に掲げるアカムツ船だけに、釣果情報に派手な数字が載ることはそうそう無い。ところが釣り人たちのクーラーは決して淋しくないのもこの釣りの特徴だ。200m以上の深場から上がるアジやサバは良型が多く、特にこれから旬を迎えるゴマサバは大型ほど美味だ。むっちりと脂が乗っていることから“ムツ”と呼ばれるようになったクロムツ。オレンジ色の魚体とパッチリした眼がチャーミングなユメカサゴ。またこの日によく交じったスルメイカなど、美味しい獲物たちがズラリ。小魚やエビなどを食べているアカムツは、こうしたフィッシュイーター(魚食魚)たちの群れと一緒に回遊しているそうなので、これらが上がったら「近くに“本命”が居る」と兜の緒を締めたい。

深場の良型マアジ
ゴマサバはかなり大型も交じる
中深場の人気者、クロムツ
奇しくも別名は“ノドグロ”のユメカサゴ
この日、良く上がったスルメイカ
見事イカの口へ掛けた田中さん(小平市)

船長に訊く「アカムツ釣りのコツ」

アカムツを釣るためのコツを渡辺英雄船長に訊いた。「できれば専用竿が良いけれどイカ竿みたいな仕掛けをしっかり動かせる竿で、常に誘い続ける方が良い。誘いが効いて、引き込みを凌げる竿ですね。ホタバリを使うならアタリがあったらしっかり合わせて、竿掛けに掛けずに手持ちで巻上げる方がバラシは少ないです。餌はあまり大きくしないで、アカムツが食いやすいようにしてあげるのも大事ですね」と非常に分かりやすく説明をしてくれた。これも、一日のアカムツの動きと周年のデータを持っている渡辺船長ならでは。“オモリトントン”の置き竿釣法から一歩進んだテクニックを習得する格好の機会となった。

知識豊富で親切な渡辺船長
船宿仕掛けは船に常備
仕掛け図

印象を一言で言うと「穏やかな船宿」

「この船宿でアカムツのボウズは初めて」と常連さんたちが口にする程難しかったこの日の釣り。「今日は厳しかった。魚は潮が行かないと食わないですよ。居ないことないんだけど、大きな魚ほど体力があるから条件が揃わないと口を使わない。たまにはイイ思いもするけどさ、いつもいつもは釣れないもん」と笑う渡辺船長。この大らかな雰囲気が常連さんたちにも共通していて、希少な高級魚を釣る乗合船の割には、終始穏やかなムードが漂っていた。沢山釣れれば嬉しいし、人より釣れたら鼻が高いのは当然だが、「楽しく釣る」ために欠かせないことは何か。それを再確認する一日だった。

船代の支払いは帰着後に
駐車場はオーシャンパークの裏手
釣り物の美味を是非お楽しみ頂きたい

(釣りビジョンAPC・川添法臣)

今回利用した釣船
千葉県江見太夫崎港『渡辺丸』
〒299-2866 千葉県鴨川市江見吉浦128
TEL:04-7096-0390
定休日:第3土曜日
詳細情報(釣りビジョン)
渡辺丸ホームページ
出船データ
アカムツ乗合
料金:午前船1万円(餌・氷付き)
出船:午前船:4時集合、4時30分出船、11時沖上がり
定休日:第3土曜日
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