釣りビジョン

二三丸・千葉県片貝港

2018.2.15号

千葉県・片貝発、ヤリイカ&キンメダイ、冬の味覚満載!

02_main.jpg

ちょっと敷居の高い印象のあるキンメダイ釣り。それがいつものイカのタックルで出来るとしたら?更に“ゲストフィッシュ”も冬に美味しい魚ばかりだとしたら…!?千葉県・片貝港『二三丸』で面白いリレー船が開幕したと聞き付け、千葉県・九十九里浜のド真ん中、片貝港へ出掛けた。

ヤリイカ&キンメダイリレー、人呼んで「ヤリ・キン」

駐車場と船着場は船宿の向かい

ヤリイカとキンメダイのリレー乗合船、人呼んで「ヤリ・キン」の集合時間は午前3時30分。集合時間がこんなに早いのは、キンメダイの釣り場まで片道2時間かかるためだ。「二三丸」が停泊する片貝旧港へは、千葉東金道路・東金ICから、東金九十九里有料道路を利用するとかなり楽だが、行きは時間的にもあまり変わらないので、コンビニへ寄りがてら下道で向かった。船宿にある船形からマグネットを外して釣り座を確保、船着場の目の前に駐車。乗り場へ道具を運んだり、軽トラの受け付けで乗船名簿の記入や仕掛けの購入をして、船長の案内があってからの乗船となる。

マグネットのある席が空いている
軽トラの受け付けで名簿の記入と氷の受け取り
出船は午前4時、釣り場まで船室で一休み

指示ダナへ合わせれば、すぐにアタリが…

釣り場まで船に揺られること2時間弱。船長のアナウンスで船室から釣り座へ戻り、仕掛けの準備をする。水深280mのポイントからスタート。魚群探知機に映る反応は220~230mとのことで、まずはここを探ってから、アタリがなければ海底まで落としてアタリのあるタナを探すようアナウンスがあった。
船中最初の魚が取り込まれたのは15分後。『二三丸』と言えばハナダイ釣りで、ヤリ・キンリレーは初挑戦と言う松尾修さん(夷隅郡)。新調した中深場用のタックルに魂が入った。続いての2番手はもう誰だか分からない程の総掛かりモードに突入したが、陽が昇って群れが水深300mより深場へと移動するまでの2時間がこの釣りの勝負。上のタナに居るサバに仕掛けの沈降を止められないよう、また、ハリ掛かりしたキンメダイを巻き上げ中にサバが掛かって振り落とされないよう、あれこれトライ&エラーの釣りを楽しんだ。

夜明け前に釣り場へ到着
船中一番手はヤリキン初挑戦の松尾さん
見事、キンメダイ7点掛けの渡辺さん

イカの道具で何ともお手軽な中深場釣り!

仕掛け図

手持ちの道具で憧れのキンメダイが釣れるように船長が工夫を重ねたこの釣り。投入は合図があったら一斉に、再投入もイカ釣りのように自由に出来るので、中深場初体験の釣り人も無駄な焦りや緊張に苛まれることなく釣りが楽しめる。また、船宿特製のフラッシャー仕掛けが本当に丁度良く出来ていて、船縁マグネットがなくても充分捌けるコンパクトさの上に、付け餌が不要なので、手前マツリや仕掛けの上げ下げ時に発生しがちなハリスのヨレが非常に少ない。気を付けるべきは、投入の際に周囲の釣り人の道糸がどのように流れているか見極めること。底ダチを取り直す際は数十m巻き上げてから落とし直し、余計な糸を出さないこと。オマツリの際には不用意に道糸を弛ませないことの3つだけ。深場の釣りでオマツリ自体は不可避だが、限られた時間内の釣りだけに、オマツリ解きの時短や、心掛けで出来る予防の知識は備えておきたい。

釣りたては銀色の魚体に紫のラインが映える
捌きやすい絶妙の船宿仕掛け
巧く取り込めば、仕掛けは何度でも再利用可

ヤリイカも乗り順調!

仕掛け図

キンメダイが水深300mより深場に移動したところで、船長はヤリイカの釣り場へ舳先を向けた。15分ほどの移動で、水深163mのポイントから再開。イカの魚探反応は海底近辺の模様。その後、イカの乗りを感知して、電動リールの巻き上げ音があちらこちらの釣り座であがるのだが、なぜか取り込みに至らない時間が流れる中、右舷トモ(船尾)の大塚道明さん(茂原市)と左舷ミヨシ(船首)の戸村徹也さん(匝瑳市)がポツリポツリながら数を伸ばした。ことのほか雌イカの群れにアタることが多かったこの日。釣り人の心理としては“パラソル級”と呼ばれる大きな雄イカの方が嬉しいものだが、雄より二回りほど小さい抱卵した雌イカを食べれば、その価値観は一変する筈だ。壺抜きにした胴体に、卵、ゲソ、軟骨を詰め込んで、楊枝を縫い刺して封をする。それを5分程煮付けて、ゆっくり冷ましたものを丸かじりにするのだが、雌の、しかも小振りな個体が特に旨いのでお試し頂きたい。

各釣り座、満遍なく上がった
時合いを逃さず3点掛けの戸村さん
抱卵した雌イカ、丸煮にすると美味

味美しき獲物たち

キンメダイもヤリイカも、ちょうど今頃が美味しい時期。更にこの釣りでは美味しい“ゲストフィッシュ”が釣れるのも特徴だ。まずはこの日最も釣れたサバ。中でも水深300m近くを回遊する体高の高い大型のマサバは“ヒラサバ”とも呼ばれ、この時期特に美味しくなる。取り込みをモタモタしているとオマツリに繋がるので、何も考えず船縁で海へ返してしまったり、デッキに放置してしまいがちだが、しっかり血抜きをして活け〆にし、氷の効いたクーラーで持ち帰れば、釣り人だけが味わえるプライスレスな極上食材となる筈だ。また、ヌルヌルな体液のケアは大変だが、釣り味も味覚も素晴らしいメダイ。焼いて食べるなら西京漬けがお薦めだが、生で食べるなら昆布〆をお試し頂きたい。またイカ族では、ずっしりしたスルメイカも交じるので、その肝にヤリイカの身を和えて食べるのもオツなもの。他にも煮付けると美味しいユメカサゴ(ノドグロカサゴ)やウルメイワシが釣れることもあるので、沖では食べ方が分からなくとも、まずは大切に処理して持ち帰ることをお薦めしたい。

深場のマサバは隅に置けない!
釣り味も食味も素晴らしいメダイ
肝でずっしりとしたスルメイカも

この丁度良さ、分かるかなぁ~

ユーモアと博識の小倉船長

ユニークな“ヤリ・キン”リレーについて、小倉忠船長に訊いた。「キンメを釣る遠征用のリールや水深400mの釣りが出来るリールって東京、神奈川、千葉では他に使い道がないんだよね。水深300m以上は追っかけない、届かなくなったらやめる。そうすると朝の2時間ぐらいしか釣りにならない。2時間走って、2時間釣りして、2時間かけて戻って来るって何か勿体ないなって思って。イカのポイントもあるし、ちょっと寄り道しようかと。キンメの専門船で釣るよりサイズは可愛いし、イカの専門船の半分も釣れないけど、少しずつでも釣れれば“合わせ盛り”ができるんじゃないかって」とユーザーフレンドリーな発想から誕生したようだ。「今日は全然釣れないワケでも無く、締まりのない釣りになっちゃったけど…たまには良い時もあります」と笑う船長。取り繕わず、肩肘張らないこの雰囲気が、リピーターの多い『二三丸』の魅力なのだろう。確かに釣果を数字で見ると派手さは無いが、クーラーの中身はすこぶる賑やかだ。2月と3月の期間限定で楽しめるヤリイカ&キンメダイリレー。この機会に是非、パワフルな電動リールにPE4号を300m+αぎっちり巻いて、冬の味覚ハントを満喫して頂きたい。

着々と釣って竿頭の大塚さん
バラエティ豊かな釣果で食の楽しみも拡がる
一潮毎に大きくなるヤリイカにも期待!
下船後はテラスで軽食とミーティング
この日の献立は焼きそばと丸干し、旨し!
お土産処と併設なので、万が一の時も安心?

(釣りビジョンAPC・川添法臣)

今回利用した釣船
千葉県片貝港『二三丸』
〒283-0102 千葉県山武郡九十九里町小関2347-12
TEL:0475-76-9957
定休日:第2・第4金曜
詳細情報(釣りビジョン)
二三丸ホームページ
出船データ
ヤリイカ&キンメダイリレー乗合
料金:1万4,000円(氷・帰着後の軽食付き)
集合:午前3時30分 出船:午前4時
※記事の掲載内容は公開日時点のものになります。時間経過に伴い、変更が生じる可能性があることをご了承ください。