釣りビジョン

千葉県・大原発、一つテンヤ・マダイ、入門の好機到来!

2018年09月15日公開

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シンプルな仕掛けで釣魚の王様・マダイが釣れる「一つテンヤ・マダイ」。秋の荒食いシーズンに先駆けて、千葉県・太東沖の浅場で連日良型が上がっているとの噂を聞き付け、大原港『新幸丸』へ出掛けた。

大原港の出船は夜明け前!

首都圏中央連絡自動車道・市原鶴舞ICを降りて約40分。『新幸丸』待合所に明かりが灯り、受け付けが始まるのは午前4時少し前。カウンターで乗船名簿の記入と乗船料の支払いを済ませ、山口雄幸大船長が運転する軽トラックにクーラーボックスなどの荷物を積む。釣り竿を片手に徒歩1分、船着場の突堤へ向かうと、船着場では山口新一船長が待っていて、釣り人が揃った所で釣り座を決めるクジを引く。餌と氷が配られ、竿のガイドに糸を通したり、テンヤを結んだりの支度が済む頃、船長から「出ますよ」の声が掛かった。女将さんの「行ってらっしゃい」に送られて、「新幸丸」は夜明け前の海へと出船した。

竿入れから“本命”が!
夜明け前の海を走ること30分程で太東沖に到着。日の出前の暗い海。上乗り役の山口大地若船長がパラシュートアンカーを投げ入れ、船長の「いいですよ、14m」の合図で釣り開始。それから僅か10分後、右舷トモ(船尾)の小池茂男さん(新宿区)に船中初ヒット。“鯛飯”に丁度良いサイズ、横方向へ疾走する元気なマダイが取り込まれた。「テンヤ・マダイはここ(新幸丸)ばっかりだね」と言う小池さんのテンヤは4号。浅場ならではの繊細なアプローチが功を奏した。そこから暫しカサゴやショウサイフグは上がるものの“本命”の顔を見ない時間が流れたが、この膠着状態を破ったのは右舷ミヨシ(船首)の宮本英彦さん(江東区)。それまでの船下の釣りから、テンヤを結び換え、アンダーハンドで軽く投げて探る釣りが見事ビンゴ。「作戦成功!」と会心の笑みが零れた。

「一つテンヤ」発祥の地

千葉県・外房に伝わる「ビシマ釣り」に端を発し、「スピニングリール・シャクリ」と呼ばれ大原の船宿で開発、進化を遂げた「一つテンヤ・マダイ」。極細のPEラインとドラグ性能の高いスピニングリール。この釣法が体系作られてからまだ10年程、“古くて新しい釣り”だ。今回訪ねた『新幸丸』は、伝統の「ビシマ釣り」を護りつつ「一つテンヤ」の黎明期から釣法開発に携わった老舗船宿だ。“名人”達の定宿としても名高く、万年初心者の小生は襟を正しての釣行となった。しかもである、駐車場に到着するなり隣に停まった車にはエキスパートアングラーの宮本英彦さん。内心ビビリながら船宿へ向かったが、大船長をはじめ女将も若船長も山口船長も親切丁寧。常連の皆さんも気さくに接してくださり、小生のキンチョーは杞憂に終わった。有名船宿の敷居は必ずしも高くない。これは特筆だろう。むしろ凄腕釣り師の集う船宿は、“名人”の釣りを見学すると同時に、同条件で実釣する事が出来るので、実は上達の近道なのかも知れない。

“オレ流”が無い「一つテンヤ」
「基本に忠実に!」が、一つテンヤをしていると誰もが口にする言葉だ。その位この釣りには確立されたメソッドがあり、自己流や独自性の入り込む余地が無い。釣り人の個性が垣間見られるのは竿の好みやテンヤ(カブラ)の重さ、カラーの選択、孫バリを打つ位置位だろうか。つまり船中殆どの人が同様のタックル、同じ餌、同様の釣り方をしていながら釣果に歴然とした差が出るのは面白い。例えば、徐々に潮の流れが速くなったこの日。5号のテンヤで着底を感知出来ても、道糸の受ける潮の抵抗でテンヤが吹き上がって(海底から浮かび上がって)しまう。こんな時どうするか宮本さんに尋ねると「意識してマメに入れ替える。これしかないでしょ」とのこと。つまり、道糸が斜めに流れて行ったら、一旦テンヤを回収して投入し直す、ということ。「あとは無理せず底ダチの取れる重さのテンヤを使う」(宮本氏)そうで、上級者であっても少々重めのテンヤまで用意する事が無難なようだ。

 

遂に出た!71cm、4.8kg!!

全体的にアタリが少なく、潮の流れも速くなって、全員が苦戦していた8時50分頃。誘いのシャクリ中に前触れのないアタリ!ドラグを鳴らして道糸を引き出す猛烈なファイト。猛然と走る姿に「青物か?」と脳裏をよぎったが、海面に浮かび上がったのは薄紅色の鮮やかな大ダイ!すぐさま船長が計測し、重量は4.8kg、体長は71cm。アタリから合わせ、ファイトから取り込みまでの一連の撮影に成功したので、この記事をお読みの皆さんにも是非ご覧頂きたい。秋はサイズより数の釣りと思われがちだが、大型の個体を釣るには春より確率が高いように感じるのは小生だけだろうか。大物との出逢いは千載一遇。是非、ドラグの綿密な調整や道糸のケア、また実釣中もリーダー(ハリス)に傷が入っていないかマメなチェックをお薦めしたい。

美味しい“ゲスト”フィッシュたち

マダイの他にも多彩な“ゲスト”フィッシュが釣れるのも、一つテンヤの面白さ。ガンゾウビラメは大型の個体はフライに、小型は丸ごと唐揚げがお薦め。煮ても焼いても揚げても旨いカサゴだが、テンヤに来る大型の個体は是非お刺し身で。この時期のハナダイ(チダイ)は焼き霜造りや酢締めが美味。ショゴやイナダなど“青物”の若魚も釣れたが、時に猛烈なファイトのヒラマサにも驚かされる。この日、小池さんが釣り上げたヒラマサは3.7kg、76cm。ウルトラライトタックルで味わうスプリンターたちのファイトは大ダイに負けず劣らずスリリングだ。

浅場で入門に最適、まだまだ大物の気配アリ!

取材日の前日には竿頭12尾、7月には7.8kg、8月に7.4kgの大物を筆頭に5kgクラスをコンスタントに上げている『新幸丸』。今期の傾向を山口新一船長に訊いた。「ちょっと遅れたけど、ここんとこ安定してる。で、例年より大きいマダイが上がってる。大物は浅場に居る。まだまだいっぱい居るよ」と、大ダイ狙いの釣り師にもこの秋は楽しみな展開だ。「今日は食いが悪ったね。“外道”が断然少ねぇもん」との船長の言葉通り、潮の加減で釣果の谷間の取材となったが、釣り場が港から近い上に釣れる水深も浅く、着底やアタリの取りやすいこの時期は天候も穏やかで入門に最適。ビギナーへのアドバイスは「基本に忠実にやれば釣れる。分からなくなったら聴いてください。1から10まで教えますので」(船長)とのこと。この日も上乗り役の若船長が手空きの時に竿を出していたが、あの難しい状況でもポンポン釣るのは、やはり一つテンヤ発祥地で培われた腕の賜物。ビギナーに限らず、素朴な疑問を投げかけてみると、目からウロコの収穫があるかも知れない。初心者からベテランまで満喫できる浅場の一つテンヤ・マダイ。是非挑戦して頂きたい。

今回利用した釣り船

千葉県大原港『新幸丸』
〒298-0004 千葉県いすみ市大原10398-21
TEL:0470-62-1500
定休日:毎月第1・3月曜日 釣果・施設情報 新幸丸 ホームページ

出船データ

テンヤマダイ乗合船
乗合船料金:12,000円(餌・氷付き)
※子供・女性・学生は割引きアリ/餌のおかわり追加料金なし
集合時間:午前船4:00までに船宿へ/午後船11:30までに船宿へ(予約時に確認を)
出船時間:準備が出来次第
貸し竿:あり(予約時に確認を)
     
※記事の掲載内容は公開日時点のものになります。時間経過に伴い、変更が生じる可能性があることをご了承ください。

この記事を書いたライター

川添 法臣
釣りビジョンAPC
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込むツリキチ。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他
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