「釣りビジョン」でうら若き女子がフライをやっていた。『水と魚の声を聴く』という番組だった。手練れのオジさんがヌーッと登場してバンバン掛けるというのがフライ番組の定番だけれど、これはなんと偏差値70超の現役JDですぞ。なおさんだったか、まったく釣れずにいた後、健気に顔を上げて「やり切ったかな」とのたもうた。あらゆる判断と集中でキャストした結果の言葉であった。私もいつかほっと吐いてみたい言葉であった。それで今回のまとめに使わせてもらうことにした。難攻の瀬で立ち止まらされると、改めて水を読みティペットを繋ぎ直し、また励む。あーもう投げこうも投げる、あちらで覚えこちらで教えられた良いと思えるあらゆる手錬で攻めつつ、一歩ずつ上っていく。ドンピシャで釣れると何かに感謝したくなって空を見上げると森の梢には藤の花が繚乱してつくづくいい季節になったと感じる。魚の気まぐれにしごき抜かれた後の汗と虚脱が清々しくジイちゃんを包んで、ああ今日は「やり切ったかな」とつぶやき、まだまだ長生きするぞと叫びたくなるのだった。